MEG概説 - 生理学研究所.PDF

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MEG概説 - 生理学研究所

MEG概説 初 版 無断転載を禁ず. 1 1.概略 ヒトの脳の働き (脳機能)を解析することは、神経科学の最も大きな目標の1つである。しかし、 ヒトを対象とする場合には非侵襲的でなければならないため詳細な研究は不可能であり、これまで はネコやサルを用いての動物実験に頼らざるを得なかった。ヒトを対象とした研究はその技術的制 約と倫理的制約のため極めて困難な分野であった。 例えばヒトの脳機能を計測するには、頭皮上に装着した電極で記録される「脳波:EEG」が以前 より用いられてきたが、動物実験では脳内のあらゆるところに直接電極の挿入が可能であり、ヒト での脳波検査に比べて格段に S/N の優れたデータを得ることができる。 しかしここにきて近年の著しい工学技術の進歩により、神経科学あるいは神経生理学の本来の目的 であった「ヒトの高次脳機能の探求」が非侵襲において可能となった。 その代表的手法の1つが生体磁場計測法であり、おもに脳磁場を対象として計測する、いわゆる 脳磁図(MagnetoEncephaloGraphy, MEG)とよばれている手法である。 生体には神経活動に伴い電流が発生 し、電流が発生すればそれに伴い磁場が 出現することは言うまでもない。電流に より構成される電場を計測するのが脳 波であり、磁場を計測するのが脳磁図で ある。 脳の周囲には導電率が著しく異なる 脳脊髄液・頭蓋骨および皮膚があり、特 に頭蓋骨による信号減衰効果は補正が 容易でなく計測結果に大きな障害とな るため、脳で発生する電流源の位置を頭 皮上に置いた電極で正確に同定するこ とは著しく困難で不可能と言っても過 言ではない。幸い磁場にはそのような制 約が無いため、脳磁場計測には多くの卓 越した利点があることは以前よりわか っていたが、その計測は技術的に極めて 困難であった。 その最大の理由は、図1に示すとおり 地磁気や各種の都市雑音による磁場は 脳磁場の1万~1億倍の大きさであり、 その影響下では通常の方法で微弱な脳 磁場を計測することはもはや不可能な ことであると思われた。しかし、近年の 超伝導技術とコンピュータ技術の急速 な進歩によりようやく実用化が可能となり、特に 10 年程前に 37ch の多チャネル大型計測装置が実 用化されてから、研究は格段の進歩をみせてきている。 前述の通り脳磁図は、msec 単位の高い時間的解像力を有し脳波と同等以上の情報を得られ、S/N 2 は脳波よりも格段に優れている。また、陽電子放射断層撮影法(PET :Positron Emission Tomography) や核磁気共鳴画像法(fMRI :functional Magnetic Resonance Imaging) と比較すると時間的分解能におい てかなり優位である。もっとも大きな欠点としては、導入予算が1システム数億円程度かかり、さ らに液体ヘリウムなどの消耗品に代表されるように高額な維持管理費もかかるため PET, fMRI と 同様に極めて高価な大型計測装置のひとつであり、その点では脳波が最も優れている。 生体磁場計測は脳固有のものではなく、装置の用途によっては肺の磁気汚染や心磁 (心臓の磁場) を計測する平面配置のセンサ形状をしたタイプのものや、microSQUID とよばれる微小部位を計測 することができるセンサを使用したインビトロの計測手法、さらに特殊な例では胎児の生体磁場を 計測する装置もあるが、一般的には脳磁場計測が中心である。いいかえれば心磁図のような比較的 大きな信号源に比べ、極めて微小な脳磁場反応を非侵襲的に高い S/N と時間分解能をもってデテク トする手法が現時点ではMEG 以外に存在しないということである。 また今日 MEG という手法名称が一般的になったが、素子の名称であるSQUID (Superconducting Quantum Interference Device)または、まれに工学的な呼称として超伝導量子干渉計、さらに装置全 体と解析系すべてを総称して生体磁気計測装置という名称が使用さ

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