古川农业试験场.PDF

普及技術 分類名〔畑・特用作物〕 小麦「あおばの恋」の高品質安定生産のための栽培法 古川農業試験場 １ 取り上げた理由 「あおばの恋」は，製めん適性の高い硬質小麦品種であり，平成20年度に宮城県奨励品種に採 用された。今後，普及を進めていく上で，高品質安定生産が可能な栽培法の確立が求められている。 そこで，目標収量を500kg/10a以上，目標子実タンパク質含有率（以下，タンパク質）を9.7～11. 3% （麦類品質区分基準におけるランク区分基準値）とした場合の目標生育量，適正施肥量，及び， 成熟期後の品質変動特性を検討したところ，高品質安定生産可能な栽培法の目安が得られたので普 及技術とする。 ２ 普及技術 １）目標生育量 a 「あおばの恋」の目標収量を500kg/10a以上とした場合の，目標生育量は，表１のとおりであ る （図１，２，３）。 表１　目標生育量 項目 幼穂形成期 減数分裂期 穂揃期 穂揃期2週間後 生育量指数 12千～22千 22千～32千 35千～45千 ― 草丈（cm） 17～24 36～40 46～57 ― 茎数（本/㎡） 700～900 600～800 700～800 ― 葉色（SPAD502） 35～40 35～40 35～40 40～45 表２　窒素追肥法 幼穂形成期 減数分裂期 穂揃期 2.5kg～5kg/10a 2.5kg～5kg/10a 窒素成分量 2.5kg/10a （草丈40cm以上 2.5kg/10a以下） （葉色40以上 2.5kg/10a以下） 注１）生育量指数は，草丈と茎数を乗じたものである。 b 穂揃期2週間後の葉色は，タンパク質と正の相関関係があり，目標タンパク質を確保するために は，40～45が適当である （図４）。 ２）栄養診断による窒素追肥法 a 「あおばの恋」の追肥法は，表２のとおりである。これにより，目標収量及び目標タンパク質 （麦類品質区分基準におけるタンパク質のランク区分基準値9.7～11.3%）をおおむね確保でき る （図３，５，６）。 b 減数分裂期追肥で，窒素成分１kg/10a あたり30～40kg/10a の収量増加が見込まれるため，減 数分裂期に草丈40cm 以下の場合，目標生育量を目安に追肥量を調節する （図３）。なお，減数分 裂期の草丈が，40cm 以上の場合，倒伏の危険性が高まるので追肥量は2.5kg/10a までに留める。 c 穂揃期追肥は，窒素成分１kg/10a あたり穂揃期追肥の２週間後の葉色が１～２増加し（図５）， タンパク質は窒素成分１kg/10a あたり0.6%程度の増加が見込まれることから （図６），葉色 40 以下の場合，穂揃期追肥の２週間後の葉色45 を超えない範囲で追肥量を調節する。なお，穂揃 期の葉色が40以上の場合には，目標タンパク質に収めるために追肥量を2.5kg/10a までとする。 ３）成熟期後の品質変動特性 a 「あおばの恋」の子実の退色は成熟期後の降雨により助長されるが（表３），退色し易さは「シ ラネコムギ」と同等であり，短期間での著しい退色はみられない（図７）。 48 b 成熟期後の外観品質の変動パターンは， 「シラネコムギ」とほぼ同様である（図８）。 c 成熟期頃からの製粉歩留の低下程度は小さく，容積重，フォーリングナンバーの変動パター