明治学院大学准教授.PDF

論文 若者の中退や無業を防ぐ非認知能力とは？ ニートと性格の関係 SilviaMendoliaandIanWalker （2015） “YouthUnemploymentandPersonalityTraits,”IZA Journal of Labor Economics,4：19,DOI10.1186/s40172-015-0035-3． 明治学院大学准教授　李　嬋　娟 Education）を受験する。その後に，大学進学のため 　１　はじめに には一般教育修了上級レベル（A レベル）テストの 　教育によって涵養された非認知能力は，認知能力よ 合格が必要だが，この合格者の割合があまり増えてい りも子どものその後の長期的な成果に影響を与えると ない。A レベルテストは難易度が高く，合格するた いう研究が蓄積され，非認知能力を考慮した様々な政 めには認知能力以外にも学習を続ける勤勉性などの 策に取り入れられてきた。例えば「The High/Scope 非認知能力が必要だという議論がある。そして，最近， Perry Preschool Program」は，低所得家庭の 3 ～ 4 英国では義務教育の年齢を 16 歳から 18 歳に引き上げ 歳の黒人の子どもに対して就学前の教育を提供する るという政策の変更があった。A レベルテストの合 ために 1962 ～ 67 年まで米国で行われた政策である。 格者を増やしてニートを減らすという目的を達成する そこでは，授業の提供だけではなく家庭訪問を通じて ような効果的な政策に変更するためにも，どのような 母親を教育過程に参加させることにより，教育や労働 非認知能力を教育すべきかについて分析した本論文 市場での成果の向上に繫がった 1） は，政策面でとても重要な研究だと思われる。 。英国では自己認識， 共感，社会性などの非認知能力の向上を目標とした 　３　データと推定モデル 「SEAL：Social andEmotional AspectsofLearning」 というプログラムが，初等教育の 90％と中等教育の 　本論文で使用されたデータは，英国教育省が管理し 70％の生徒を対象に実施されている。英国教育省は， て い る「Longitudinal Study of Young People in 非認知能力の教育の効果を認識しはじめ，「Positive England （LSYPE）」である。このデータは，教育成 for Youth」政策や「National Citizen Service」など 果をはじめ，学校・家庭・労働市場での態度，家族と を財政的に支援し，10 代の若年層の社会情動的スキ の関係，健康に影響を及ぼす行動に関する質問など幅 ル（social and emotional skills）の向上のために努力 広い質問を含んでいる。LSYPE は，2004 年当時に 9 してきた。このように非認知能力の改善により教育の 年次（14 歳）だった英国全土の若者の代表的サンプ 長期的な成果を向上させることを目指す動きが増加し ルを追跡したものであり，このサンプルを個人レベル つつある中，18 歳から 21 歳のあいだにニート （NEET の 行 政 デ ー タ で あ る「National Pupil Database :NotinEducatio