酒井克彦.PDFVIP

税太ジャ岬ナル 1 2〔事05．4 ドイツにおける税理士制度と職業賠償責任保険（上） 税務大学校研究部教育官 酒 井 克 彦 はじめに 回における税理士制度の在り方を考える上で 税務行政上、納税者のコンプライアンスの 参考となるはずである㌧さりとて、ドイツ税 維持向上は最も重要なテーマの泄でつであるが、 理士制度との比較研究が重要であるとしても、 －一概にコンプライアンスの維持向上といって その範囲ほあまりに広大である。 も、そのための措置として考えられる手法に そこで、税理士に対する租税行政当局の監 はさまざまなものがある。例えば、税理士の 督と税理士の活動フィー∵ルドにおける法的イ 果たすべき役割をそこに位置付けることもそ ンフラ整備は車の両輪のようなものであると のw～㌦つであろう。けだし、税理士は「租税に の理解に立ち、本研究でほ、後者の問題を中 関する法令に規定された納税義務の適正な実 心に、ドイツにおける税理士制度が我が国の 現を図ることを使命」とする「税務に関する 税理士制度に与える示唆等を探ることとした 専門家」であるからである（税理士法1）。 い。 かような税理士の使命に着目すれば、税理 まず本稿（上）では、税理士制度を概観し、 士が自らに課された使命を果たすことによっ 税理士制度が資格付与制度に裏付けされた完 て納税義務の適正な実現への道筋を付けるこ 全独占業種として法定されていること、その とが考えられる。特に、租税行政庁職員の定 ことから専門家としての相応の責任が要請さ 員増加の困難性、申告者数の増加、課税・徴税 れていること、租税専門家としての水準を担 事務の複雑化、困難化といった税務行政を取 保するための仕掛けとして職業自治が機能し り巻く環境が著しく変化している現下におい ていることを確認する。次に、租税専門家と て、税理士に期待されることは決して小さい して厳しい責任追及や高度な注意義務が課さ ものではないといえよう。 れている傾向を概観した上で、ドイツの税理 このような見地に立つと、税理士が自らに 士制度におけるインフラ整備の重要性を確認 課された使命を果たすことが可能であるかど することとする。 うかということが重要な関心事項となるはず である。ただしこのことは、税理士制度がい lドイツにおける税理士制度の概観 かにあるべきかという点についての検討を抜 1税理士資格と税理士制度 きにしては、考察し得ない事柄である。そこ （1）税理士と税務代理士 では、税理士に対する租税行政当局の監督の ドイツ税理士法（Steuerbera転f唱喝eSetZ・ 在り方の問題と、税理士が納税義務の適正な StBerG）2上、税理士試験に合格したか3、あ 実現を図るべく活動するためのフィールドの るいは税理士試験を免除されている者のみが 整備、すなわちインフラ整備の問題への検討 4、税理士（Steuerberater）5として免許を受け が具体的に要請されよう。