処理水准自己生成-psycho.edu.yamaguchi.PDFVIP

精緻化の方法が虚記憶に及ぼす影響 谷村 萌 キーワード：精緻化 虚記憶 処理水準 自己生成 問 題 方 法 日常場面で、実際に起こった事実と異なっ 予備実験を基に，以下の本実験を考えた。 てそれらの事柄を思い出したりすることを， 実験参加者 虚記憶という(2004，濱島)。 Y 大学の大学生61 名(男性：16 名 女性： 実験室内の虚記憶研究の一つとして、DR 45 名 平均年齢：21.11 歳) M パラダイムがある。DRM パラダイムによ 刺激 る研究では，リスト語を提示した後に，リス 学習単語を5 つのカテゴリー (果物・文房 ト語には入っていないが，カテゴリーの代表 具・動物・野菜・乗り物) に分け，各リスト 語であるルアー語を再認するというのが虚記 15 単語ずつの，計75 単語を用意した。呈示 憶である。DRM パラダイムの再認テストの 群は，単語の下にあらかじめ点線で絵を書い 結果，リスト語を学習すると，リスト語の正 ておき，生成群は単語の下を空白にしておい 再認率が上がるとともに，そのリストのルア た。スライドは全部で40 枚あり，学習単語(各 ー語の虚再認率も上がると言われる(David カテゴリー内から 3 つずつ) と，非学習語(各 A.Gallo,2006 向居訳 2010)。 カテゴリー内から5 つずつ) を，ランダムに配 本研究では，この“虚再認率”に注目し， 置した。 符号化する際の情報をより深い水準で処理す 手続き る「精緻化」が虚再認率を下げるのではない リスト構成(実験者呈示・自己生成リスト) かと考えた。 を1 要因とする，実験者間計画であった。ま また，本研究では，精緻化の方法として， た，本実験は偶発学習を行った。 リスト語の絵を生成させる生成群と絵をなぞ 1．絵を描く際の注意点と実験内容を教示し る実験者呈示群の間で記憶成績と虚再認率を た。1 つのリストにつき，2 分間(15 単語×8 比較することにした。 秒間) の，合計10 分間(2 分間×5 リスト) の作 先行研究の結果を踏まえ，以下のように仮 業をするよう促した。 説を立てた。 2．3 分間の数独をするよう促した。 3．自分の正答率を予想した後，再認テスト 仮説① 記憶成績は，生成群の方が呈示群よ を行った。スライドの表示時間は，1 単語に りも高くなる。 つき3 秒間であり，再認テストは2 分間(3 秒 仮説② 呈示群は，正再認率が高くなるとも 間×40 枚)であった。 に，虚再認率も高くなるが，生成群 4．研究内容の説明を行った後，実験者の質 は，正再認率が高くなるが，虚再認 問に答えてもらい，内省を聞いた。質問は， 率は低下する。