初代中央気象台长荒井郁之助1.PDF

183 ● 蝋 ，、憾 初代中央気象台長荒井郁之助 汀 ・ 1 　嚢 その青年時代 昏 堀 内 剛 二 　まえがき：一一一筆者は前に「蓋し筆者をして気象台 史に向はしめたそもそもの始まりは荒井郁之助を傳する 顕徳と名乗った．同時に昌亭校南楼に通学し，当時論講 ことにあった」と記した．気象台創立80年に当り，荒 の会頭であった永井岩之丞（爾志）を始めて見た．傳記 井郁之助傳資料若干を瞥見することができたので，その 略傳の一部，主として青年時代について報告する．関係 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　め 間学間所の輪講会読等の外他事なし」と云い，また碑銘　　　『撹 資料は下記の通りである． に「君夙に家訓を承げ，叉昌李校に学び，兼ねで武技を　　鞭 　1．荒井家伝記　荒井郁之助手記 燗ひ，馬上槍を使ふこと其長ずる所なり」とある．　　　　　艦 　2．荒井郁之助君墓碑銘　田辺太一撰 　天保より弘化にかげて（1830～47）異国船の来航よ5 　3．西往日録　矢田堀景藏手記 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　『1 やく繁ぐ，海防の儀起って，実学としての蘭学は兵学め これらはすべて，岡田武梅博士並びに三宅泰雄博士の斡 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　一遜 面で次第に蚕要覗され始めていた．蛮辻の嶽は華山，長 旋により，荒井陸男画伯（郁之助令息）にその借覧を許 英を捕えたが，、一方高島秋帆に西洋砲術の教授を許可し されたものである旨を記し，ここに謝意を表する． ているのが見られる．下って嘉永6年（1853）のペリー 　　　　　　　＊　　　　　　　　　　　　＊ 　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　　　＊ 来航となって，大艦製造の禁を解き，講武所を設置し，　　　旗 　荒井郁之助は天保7年（1836）、4月29日江戸湯島に 生まれた．幼名を幾之助に作り，組父の幼名をとったと る． い弓・父溝兵衛24才母千賀零0才の長子である． 　洋式砲術について云えば，秋帆の江戸での砲術教授許 　荒井家はもと幕府小普請方で目見以上の家柄．祀父清 可が天保13年（1842），一この頃既に勝麟太郎は蘭学に志 兵衛は睡斉と号し，樫斉叢書拾余巻（散侠）の暑あり． して弘化乖年．（］844）には佐久間象山に洋式砲術を習う 天保9年49才で残した．，父清兵衛は抜んでられて代官 に至り，その象山ほ嘉永元年（1848）洋式大砲を躊造し となり，奥州棚倉，甲州市河，輿州桑析及び北関東に相 ている．また同年には本邦最初の洋式船舶書である箕作　　　，職 次いで数万石を泰配し