有机金属错体.PDF

11 有機金属錯体 定義 金属－炭素結合を含む錯体 アルキル錯体 オレフィン錯体 芳香族の錯体 カルボニル錯体と18電子則 ヒドリド錯体 生体内の例 シアノコバラミン（ビタミンＢ１２） 補酵素型 有機金属錯体 （金属に炭素が直接結合した）M-C 結合を含む錯体を有機金属錯体という。有機金属錯体は触媒を始め 様々な分野で研究されており、錯体関連分野のなかでも非常に研究者の多い分野である。野依良治先生 のノーベル賞受賞もこの分野と言って良く、日本は特に研究が進んでいる国の 1 つである。 「有機遷移 1 金属化学の研究は、三日やったら止められない。」 と書かれた先生もいらっしゃるほど、この分野は近 年多くの研究者の興味を集めた。有機化合物の中心である炭素と、(本来有機化合物とは相容れないはず の)遷移金属がびっくりするような構造をもつ多彩な化合物を作り、それが触媒等の分野で多くの成功を 収めてきたのがその理由であろう。有機金属錯体は、比較的最近知られるようになった化合物が多く、 古くはZeise 塩のように１００年以上昔から知られている化合物もあったが、多くはここ数十年で合成さ れた化合物である。ここでは代表的な化合物の構造を紹介する。 アルキル錯体 アルキル基が金属に単結合を介して結合した錯体である。ここでアルキル基部分は形式的には－１価の 配位子として作用することに注意せよ。例えば[Mn(CO) (CH )]ではマンガンの酸化数は+1，[Re(CH ) ]で 5 3 3 6 はレニウムの酸化数は＋６となる。典型元素のアルキル錯体は無機化学I でもお話ししたように単純な化 合物が多数知られている。 CH Li メチルリチウム 3 CH CH MgBr エチルグリニャール 3 2 Pb(CH ) テトラメチル鉛 昔ハイオクガソリンに使われた 3 4 Sn(CH ) 3 4 これらは通常の配位子と同じように配位結合で理解できる。ただ、上述のようにアルキル配位子は－1 価 の陰イオンとして配位するとみなすことは注意しなければならない。つまり:CH3 －アニオンが金属に配位 結合によって結合すると考える。 n+ - n-1 + M ＋ ：CH → [M ：CH ] （ ） 3 3 遷移金属の単純なアルキル錯体の例は多くない。リンの配位子（PR 型 ホスフィン配位子という）な 3 どが一緒に金属に配位するとアルキル配位子が結合しやすくなるため、ホスフィンは有機金属の世界で しばしば用いられる。それでもアルキル基を初めとするC で結合する配位子をもつ有機金属錯体は不安 定なものが多く、例えば空気中では容易に分解してしまうなどの性質を持ったものが多い。従って窒素 やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で合成されることが多く、 有機金属の研究というと特別なガラス 器具や装置を用いて不活性ガス雰囲気下で行う研究を指すようなイメージができている。 例えばプリントに示した[Pt(CH )Cl(PPh ) ]ではCl とCH が-1 価の配位子となり、全体は中性なので、 3 3 2 3 Pt の酸化数は＋２となる。 アルケン錯体 1830 年ころ、デンマークの化学者Zeise は、エチレンを含む不思議な組成の白金化合物K[PtCl (CH =CH )] 3 2 2 を合成