放射线灾害复兴学报告书.PDF

放射線災害復興学報告書 コース名：放射線災害医療コース 氏 名 ：中峠 洋隆 ○放射線災害復興学に関して （放射線災害復興に関する考え，携わってきた経緯，研究経過等を記載） 放射線災害時においては経済的，環境的，人体に対する肉体的，精神的な影響を及ぼすことから，他 分野融合的なアプローチが必要不可欠となる，その中でも，放射線災害時における，生物学的影響は， がんや奇形の発生といった有害事象に関わる事は明らかになってきているが，これらのリスク評価を行 う方法は確立していない．このことは風説の形成や，被災者への不安の増長につながり，医療，生物学 的フィールドを超えて影響が拡散していく要因の重要な課題である．放射線の生物学的影響については， 高線量，および低線量の放射線被曝により、腸管出血や脱毛といった急性期障害や発がんに代表される ような晩発性障害，さらには胎内被爆による奇形などの、種々の障害が発生するが、その標的細胞は各 臓器の幹細胞であると考えられている。従って，幹細胞を明らかにすることは放射線の生物学的影響を 定量評価し，さらにその影響を予測する上で重要である．一方，がん治療の現場では，(1)抗がん剤に非 常によく反応した症例でも投与中止後しばしば癌の再発が見られる．(2)放射線治療や化学療法で Complete Responseが得られた後に，癌の再発が頻繁に見られる．(3)放射線治療，化学療法および手術療 法後，長期間を経てリンパ節転移や局所再発が見られる．などの症例によく遭遇する。(1)の原因として、 ABC トランスポーター分子などの細胞膜での高発現による抗癌剤の高排出細胞(耐性細胞) の存在．(2)の原 因としては，放射線治療や化学療法に耐性を示す，分裂の非常に遅い細胞群の存在．(3)については，ほ とんど増殖しない癌細胞の存在，などがその原因として考えられる．近年，癌組織中には未分化な細胞 や分化した細胞、さらには分裂速度が異なる細胞など多種類の細胞が混在していることが知られており、 放射線治療や化学療法などは分裂速度の速い細胞を標的としているため，分裂速度が遅い癌細胞には治 療効果が低いことが推察され，再発や転移にはこれらの治療に抵抗性の癌細胞が関与していると考えら れてきた．このような疑問を解決する糸口として、癌幹細胞の存在が考えられている．近年，幹細胞研 究の著しい進展により，胚性幹細胞，造血幹細胞，組織幹細胞をはじめとする幹細胞の性状が明らかに されはじめ，幹細胞を用いた再生医療・細胞治療が期待されているが，造血器系腫瘍において癌幹細胞 が発見されて以来，さまざまな固形腫瘍にも幹細胞が存在し，腫瘍の発生・ 進展・維持に重要な役割を 果たしている可能性が明らかにされつつある．つまり，癌組織には自己複製能を有し，半永久的に娘細 胞を生み続ける少数の細胞群と，高い増殖能を持つが，最終的には分化や老化により増殖能を失う大多 数の細胞群からなることが明らかになってきた，このことは，正常の組織幹細胞とそれから生じた分化 細胞のような関係が癌組織にも存在していることを示唆している．このような幹細胞様の癌細胞，つま り癌幹細胞は放射線や抗癌剤に対する抵抗性も高いことが予想され，先の臨床での再発例を裏付けてい る．癌幹細胞は，正常組織幹細胞そのものに遺伝子変化が蓄積した細胞なのか，あるいは正常幹細胞か ら分化方向へtransit 中の細胞に遺伝子変化が蓄積し癌化した細胞なのか，あるいは 変異が蓄積した transit 細胞に何らかのリプログラミングが起こり幹細胞機能を再獲得した細胞なのか不明であるかが， 癌の起源となる細胞と考えられており，癌幹細胞と組織幹細胞との間には，その自己複製能や分化能の 制御には多くの共通性があることが予想される．人工多能性幹 （iPS）細胞は，エピジェネティックな変 化が起こっている分化細胞にoct3/4, sox2, klf4, c-Myc の4 種類の遺伝子を導入することにより，自己複製 能と多分化能が再獲得された細胞であるが，これら遺伝子のうち，c-myc は癌遺伝子であり Klf4 は癌遺 伝子あるいは癌抑制遺伝子としても機能することから，iPS 細胞の誘導機構に類似した機構が癌幹細胞の 誘導に