2010年度日本流体力学会赏.PDFVIP

161 〔巻頭言〕 2010 年度日本流体力学会賞 日本流体力学会賞候補者選考委員会 委員長 後 藤 俊 幸† 日本流体力学会では，「論文賞」，「竜門賞」および「技術賞」の学会賞を設け，優れた業績を挙げた個人あ るいはグループを毎年表彰しています．論文賞は，過去 10 年以内に学術雑誌に発表された流体力学の発展 に大きく寄与したと認められる論文の著者である本会会員に授与されます．竜門賞は，当該年度末に 40 歳 未満の本会会員で，過去 10 年以内に流体力学の発展に寄与した論文を査読のある雑誌に発表して優れた業 績をあげ，独創性と将来性に富むと認められる個人に授与されます．技術賞は，過去 10 年以内に発表され た流体力学の知見に基づく画期的な技術（製品やソフトウェアも含む）で，既にある程度実用化等の評価が なされ，また多くの人への受益が認められる技術を開発した個人もしくは代表者とそのグループに授与され ます．2010 年度学会賞の募集は「ながれ」29 巻３号の会告とホームページにて行い，自薦および他薦によ り論文賞2 件，竜門賞 3 件，技術賞４件の応募をいただきました．流体力学の幅広い分野の第一線で活躍し ておられる研究者９名に委員長を加えた 10 名で学会賞選考委員会を構成し，選考ルールにのっとって厳正に 選考を行いました．選考委員会では候補論文や参考論文などをもとに選考を行い，2010 年度学会賞最終候補 者は論文賞該当なし，竜門賞 2 名，技術賞 1 件という結論に達し，2011 年 2 月開催の理事会に推薦し承認さ れました．ここに，竜門賞と技術賞を以下の方々に授与することになりましたので報告いたします． 竜門賞 る流体力学の宝庫ともいえる流れである．このため， ● 鈴木崇夫（The Boeing Company） 研究の歴史は古く，さまざまな視点から多面的な研 対象業績：数値流体力学と実験流体力学の融合 究が行なわれてきた．しかし，今日においても未解 による噴流の不安定波と放射音の研 決問題が多く残されている． 究 鈴木氏は，気体の超音速噴流の側面からの衝撃波 関連論文： の漏れとそれによる音の生成のメカニズムを，圧縮 (a) T. Suzuki and S. K. Lele, “Shock leakage 性ナヴィエ‐ス トークス方程式の直接数値シミュレ through an unsteady vortex-laden mixing layer: ーション （DNS）とそのデータを用いた幾何音響学 application to jet screech,” J. Fluid Mech., Vol. 的考察により明 らかにした．また，亜音速噴流につ 490, 139-167 (2003). いて，側面で発生する不安定波動 を，噴流周 に円 (b) T. Suzuki and T. Colonius, “Instability waves in 錐状 に設置 した多数のマイクロフォンによる圧力測 a subsonic round jet detected using a near-field 定によって検出する方法 を提案 した．マイクロフォ phased microphone array,” J. Fluid Mech., Vol. ン群の設置場所は過去の DNS によるデータに基づ 565, 197-226 (2006). いて決定され，測定した圧力データからどのように (c) T. Suzuki, H. Ji, and F. Yamamo