2011年度日本流体力学会赏.PDFVIP

237 〔巻頭言〕 2011 年度日本流体力学会賞 日本流体力学会賞候補者選考委員会 委員長 青 木 一 生† 日本流体力学会の学会賞には，「論文賞」，「竜門賞」，「技術賞」の三賞があり，これらにふさわしい優れた 業績をあげた個人あるいはグループを毎年表彰しています．論文賞は，過去 10 年以内に学術誌に発表された 論文で，流体力学の発展に大きく寄与したと認められるものの著者である本会会員に授与されます．竜門賞 は，当該年度末に 40 歳未満の本会会員で，流体力学の発展に寄与した論文を過去 10 年以内に学術誌に発表 して優れた業績をあげ，独創性と将来性に富むと認められる個人に授与されます．技術賞は，過去10 年以内 に発表された流体力学の知見に基づく画期的な技術（製品やソフトウェアを含む）で，既に実用化などであ る程度評価され，多くの人に役立ったと認められる技術を開発した個人または代表者とそのグループに授与 されます． 2011 年度の学会賞は「ながれ」30 巻 3 号の会告とホームページで募集し，論文賞 2 件，竜門賞 3 件，技術 賞 1 件の自薦および他薦による応募がありました．委員長と流体力学の幅広い分野で活躍する研究者 9 名の 計 10 名で学会賞選考委員会を構成し，候補論文や参考論文などをもとに，選考ルールに従って厳正に選考を 行いました．その結果，2011 年度の学会賞最終候補者は，論文賞 1 件，竜門賞 2 名，技術賞該当なしという ことになり，2012 年 2 月開催の理事会に推薦して承認されました．論文賞と竜門賞の受賞者について，以下 のとおりご報告いたします． 論文賞 数値的に実現することで，十分な慣性小領域 を含む 受賞者：金田行雄（名古屋大学・大学院工学研究科・ 乱流データベースを構築 した．そして，エネルギー 教授） 散逸率が高レイノルズ数極限で粘性率に依存 しない 石原 卓 （名古屋大学・大学院工学研究科・ こと，慣性小領域におけるエネルギースペクトルが 准教授） コルモゴロフの-5/3 乗則か ら有意 にずれることなど 横川三津夫（理化学研究所・次世代スーパ の基本的挙動 を明確に示す数値的証拠を提示 した． ーコンピュータ開発本部・グループディレ また，受賞者らの数値計算は，地球シミュレータ クター） 上でスペクトル法によって16.4 TFlops の高速計算を 板倉憲一（海洋研究開発機構・地球シミュ 実現 したことが評価されて，2002 年ゴー ドンベルの レータセンター・グループリーダー） 特別賞を授与されている [1] ．さらに，受賞者らの 宇野篤也（理化学研究所・次世代スーパー グループは，得 られた乱流データベースを詳細かつ コンピュータ開発本部・システム開発チー 慎重 に解析することで，乱流統計量に関する数多く ム） の知見をもたらし，2009 年の Annu. Rev. Fluid Mech. 対象論文：Y. Kaneda, T. Ishihara, M. Yokokawa, K. にその成果をまとめている [2] ． Itakura, and A. Uno, “Energy dissipation rate 以上のように，本論文は地球シミュレータの性能 and energy spectrum in high resolution