2012年度日本流体力学会赏.PDFVIP

207 〔巻頭言〕 2012 年度日本流体力学会賞 日本流体力学会賞候補者選考委員会 委員長 山 本 誠† 日本流体力学会では，表彰規程に基づいた厳正な審査を行い，優れた業績を挙げた個人あるいはグループ に対して「論文賞」，「竜門賞」，「技術賞」を授与し，次年度の年会において授与式を実施しています．論文 賞は，過去 10 年以内に学術誌に発表された，流体力学の発展に大きく寄与したと認められる論文の著者であ る本会会員に授与されます．竜門賞は，当該年度末に40 歳未満の本会会員で，流体力学の発展に寄与した論 文を過去 10 年以内に学術誌に発表して優れた業績を挙げ，独創性と将来性に富むと認められた個人に授与さ れます．また，技術賞は，過去 10 年以内に発表された流体力学の知見に基づく画期的な技術（製品やソフト ウェアを含む）で，実用化等によってある程度社会的な評価がなされ，多くの人々の役に立ったと認められ る技術を開発した個人またはグループに授与されます．2012 年度も上記のような評価基準に則って，学会賞 の選考が行われました． 2012 年度の学会賞の選考は，「ながれ」31 巻 3 号の会告とホームページにて候補者の募集を行うことから 開始され，10 月 31 日の応募締切までに，論文賞2 件，竜門賞 2 件，技術賞 1 件の応募がありました．流体 力学各分野の第一線で活躍されている研究者 10 名と委員長を加えた計 11 名により学会賞選考委員会を構成 し，選考ルールに従い，第一次および第二次の計2 回の厳正な審査を通じて候補者の選考が行われました． 選考の結果，論文賞 1 件，竜門賞 1 名，技術賞該当なしという結論に達し，2013 年 2 月開催の理事会に候補 者を推薦し，受賞者とすることの承認を得ました．以下，論文賞と竜門賞の業績および受賞者についてご報 告いたします． 論文賞 本論文では，Navier-Stokes 方程式から出発し，乱流 受賞者：深潟康二（慶應義塾大学理工学部・准教授） 統計量 と壁面摩擦抵抗を定量的に結びつける厳密な 岩本薫（東京農工大学大学院工学府・准教 関係式を導 くことで両者の関係を明 らかにするとと 授） もに，より効果的な摩擦抵抗低減制御の指針 を示 し 笠木伸英（科学技術振興機構研究開発戦略 た．まず，チャネル，円管および平板境界層乱流に センター・上席フェロー） おける壁面摩擦抵抗を異なる力学的効果による寄与 対象論文：Koji Fukagata, Kaoru Iwamoto and Nobuhide 分へ と分解する厳密 な恒等式が導出 された．特に， Kasagi, “Contribution of Reynolds stress 完全発達したチャネル乱流及び円管内乱流では，壁 distribution to the skin friction in 面摩擦抵抗係数 は層流抵抗と レイノルズ剪断応力の wall-bounded flows”, Physics of Fluids, 重み付 き積分の和 という極めて簡単な関係 となるこ Vol.14, L73-L76, (2002). とが示 された．この恒等式において乱流の寄与を表 選考理由： す右辺第二項の重み係数は壁面近傍で最大で中心で 壁乱流の摩擦抵抗低減は，流体力学における挑戦 は０となることから，壁乱流の摩擦抵抗を低減させ 的課題であるばかりでなく，省エネルギー等の実用 るには，特に壁面近傍レイノルズ剪断応力を抑制す 上の観点からも極めて重要な位置付