定量的分析手法.doc

第２章　定量的分析手法 （参考文献 Render B. Stair R. Jr. Hanna M. Quantitative Analysis for Management (2003) Pearson Education International, Prentice Hall. ） はじめに シミュレーションによる方法もその一つである定量的な分析方法は、数千年の昔から問題解決の方法として用いられて来てはいるが、技法としての本格的研究や、定量的な技法を実際上の意思決定に適用するのは大部分、二十世紀に入ってからのことである。この授業でこれから主としてシミュレーションに焦点を当てて学習して行く予定である定量的技法は、どんどん変化に富んで拡がって行く複雑な問題、実業、政府関係、健康?介護、そして教育、その他の領域での複雑な問題に適用され成功してきている。しかし、個々の技法が如何に作動し機能するかの数学的な側面を学ぶだけでは十分ではない。個々の手法の限界や、その方法が拠って立っている仮定、そしてその方法の適用可能性についても親しんでおかなければならない。定量的な手法の成功例は通常、時宜にかなった、正確で、柔軟で、経済的で、信頼が置けて、そして理解と使用が簡単な解となって実を結んでいる。 定量的分析とは 定量的分析とは、経営上の意思決定に対する科学的な方法である。思いつきや、感情、推測は定量的の手法の構成部分とはならない。この手法はデータから出発する。工場における原材料と同じように、データは意思決定のために重要な情報へと処理され、或は加工される。生データの意味ある情報への処理と加工とは、定量的分析の心臓部分である。計算機は、定量的分析がどんどん利用されて行く中で、なくてはならない役割を果たすようになって来た。 問題を解く際、経営者は定性的な要因と定量的な要因の両方を考えなければならない。投資を例にとって見よう。経営者は、銀行の預金証書、株式市場での投資、不動産への投資などを含むいくつかの代替案を考えなければならないであろう。（投資は）そしてある年数の間、定められた金利で銀行に預けられたとき、投資は将来価値が幾らになっているかを決定するために定量的な方法を用いなければならない。あるいは、株を考慮に入れているいくつかの会社の貸借対照表から財政的な比率を計算するために、定量的な方法を用いることも出来る。いくつかの不動産会社は、貨幣の流れと投資資産に対する期待収益率を分析するために、定量的分析法を用いる計算機プログラムを開発することもある。 以上の定量的分析に加えて、定性的な要因も考慮されなければならない。天候、地方自治体の条例、新技術の発見、選挙結果、等々はすべて定量化することが難しい要因である。 定性的要因の重要性の故に、意思決定過程における定量的分析の役割は変化し得る。定性的分析が無い場合には、問題、モデル、そして入力データが同じならば、定量的分析の結果は、意思決定過程を自動化できることになる。たとえば、いくつかの会社は、新しい商品を何時追加注文すべきかを自動的に決定するために、定量的な在庫管理モデルを用いている。しかし、大抵の場合は、定量的分析は（意思決定過程の自動化ではなく）意思決定過程を支援するものであろう。定量的分析の結果は、意思決定過程において、他の（定性的）情報と結合されるであぅ。 定量的分析の方法 定量的分析の方法は、次の要素から成り立っている。①問題を設定（定義）する。②モデルを構築する。③入力データを収集獲得する。④解を導出する。⑤解を検証試験する。⑥結果を分析する。⑦結果を実地に移す（図参照）。各段階が完全に完成してから次の段階に進まなければならないということはない。多くの場合、最終結果が実装される前に、以上の段階の１つ、又は複数の段階がある程度、変更を受けるであろう。このことは、すべての後続の段階が変更されることになる。ある場合には、解の試験をしているときに、モデル、あるいは、入力データが正しくなかったことが判明する場合もある。このような場合には、問題定義に続くすべての段階が変更されることになろう。以下、各段階を少し詳しく見て行こう。 問題を設定する 定量的方法の最初の段階は、問題を明確に、簡潔に記述することである。この記述が、後続の段階に方向と意味を与えることになる。多くの場合、問題を定義することは、最も重要で最も難しい段階である。問題のあれこれの症状を述べるのではなく、問題の本当の原因をはっきりさせることが肝要である。１つの問題は他の問題と関連しているかも知れない。関連しているその他の問題を考慮しないで、１つの問題を解くことは全体の状況を更に悪くする。このように、１つの問題への解が他の問題、或は全体的な状況一