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Titleウェーブレット解析の統計学への応用について Author(s)田中, 勝人 Citation数学, 57(1): 50-69 Issue Date2005-01 Type Journal Article Text Versionpublisher URL /10086/17635 Right Hitotsubashi University Repository 50 ウエーブ‘レッ卜解析の統計学への応用について 田中勝人 1 はじめに ウェーブレット解析のルーツは， 1980年代初頭にフランスの石油探査技師J.Morle七が考案した解 析手法にあるとされている ([27]).Morletは，油床が存在する地層を特定化するために地中に振動を 与え，人工的に作り出された地震波を解析する研究に従事していたが，実際に観測される地震波は，油 床以外の地層や異質物の影響により，多くの不規則で局所的なノイズを含んでおり，伝統的なフーリ エ変換による解析方法では満足のいく結果が得られなかった.すなわち，規則的な三角関数の重ね合 わせだけでは，ノイズを含んだ地震波を表現することに限界があった.そこで，短い波(ウエ}ブレツ ト)を局所的に拡大縮小したり，平行移動したりすることにより，地震波を時間と周波数の両面から解 析する手法を考案したのである.これがウェーブレット解析の始まりである. このように，ウェーブレヅト解析は，きわめて実用的な理由から工学の分野で生まれた手法である. その考え方を直感的に理解するために，従来の方法である時間解析(時間領域における解析)やフーリ エ解析(周波数領域における解析)と比較して考えよう.時間解析は時間のパラメータ，フーリエ解析 は周波数のパラメータと，それぞれが lつのパラメータをもっ l次元における解析手法である.それ に対して，ウェーブレット解析は，時間と周波数の2つのパラメ」夕を座標とする 2次元のウェーブ レット領域における解析手法である. 具体例で説明しよう.図 1は，離散的な時系列 {xdを直線で結んだものである(標本サイズ T= 512).この時系列の時間構造を推定して，確率モデルをあてはめるのが時閥解析の立場である.図2 には，その 1つの方法として，時間的な従属関係を見るために，ラグ 100までの標本自己相闘が示さ れている.なお，ラグhの標本自己相関は， rh= 2:E:六Xt-X)(Xt+h-x) X=主主的 h-ZL1(zt-2)2 で定義される.この図から，滅衰の程度は非常に緩やかであり，非定常的な時系列であることが伺え るが，時間解析では，周期的な変動に関する情報を推測することは困難である.他方，圏3はフーリ エ解析の例であり，圃 lの原系列のピリオドグラム んω(j)=主lszt{ ωj=会(j=1，•. .T/2) ， が示されている.縦軸はdBスケール (101og I ωj))である.この図からは，原系列全体としての lO T( 周期成分の強弱を判断することはできるが，時間的な変化を判断することは不可能で、ある. 図4にはウェーブレット変換が示されている.1番上の時系列は圃 1に示された原系列そのもので ある.2番目以降の系列は，原系列を高周波数から低周波数の順にレベルごとにウェーブレット変換し 50 ウェーブレット解析の統計学への応用について 51 た系列である.高周波数の変換の方が，短い周期に対応した変動を見る必要があるため，より多くの 時点で計算されている.これらがウェーブレット領域を形成している.各レベルの時間的な変動を見 ることにより，原系列は，高周波よりも低周波の変動の方が大きいことがわかる.ウェーブレット解 析は，これらのウェーブレット変換系列からさまざまな統計量を計算して，原系列に対して想定され るモデルのパラメータに関する統計的