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6 LCMSMS 用高性能標識試薬の開発と微量生体分子の高感分析への
上原記念生命科学財団研究報告集, 22(2008)
6. LC/MS/MS 用高性能標識試薬の開発と微量生体分子の高感度分析への
応用
三田 智文
Key words:液体クロマトグラフィー,質量分析法,標識試 *東京大学 大学院薬学系研究科 生体分析
薬,疾患マーカー,代謝異常症 化学教室
緒 言
生命現象を深く理解するためには,生命機能の維持に関与する生体分子の存在部位,生成や消失などの動態を正確に把握
する必要がある.疾患の原因を解明し,その治療法,予防法を確立するためには,疾患に関わる生体分子を特定し,その機
能および動態を解明しなければならない.また,有効で安全な薬物療法を行うためには,薬物の体内動態を正しく把握する必
要がある.このような目的のためには,生体分子や薬物の高感度で選択的な分析法が不可欠であると考えられる.
近年,質量分析器 (MS)あるいはタンデム型質量分析器 (MS/MS)が開発され,液体クロマトグラフィー (LC)を組み合
わせた LC/MS 法あるいは LC/MS/MS法が,生体分子や薬物の高感度かつ選択的分析法として広く用いられている.LC/MS
法においても,検出感度,選択性の向上のために標識試薬がしばしば用いられているが,現在に至るまでLC/MS法に適した
標識試薬は少なく,UV 検出,蛍光検出用標識試薬を用いているのが現状である.一方,LC/MS/MS 法に適した標識試薬
はほとんど報告されていない.LC/MS/MS 法に用いる標識試薬は,高いイオン化効率に加え,MS/MS により特定の娘イオン
を選択的に高い収率で生じることが必要である.以上のような条件を満たす LC/MS/MS用標識試薬を開発するためには,化
合物の構造とMS/MSによる解裂様式の関係を詳細に検討し,標識試薬として適した構造を見出すことが不可欠である.
本研究では,現在嘱望されている LC/MS/MS 法に適した高性能標識試薬を開発し,さらに,開発した標識試薬と LC/MS/
MS法を用いて,疾患マーカー分子の高感度な分析法を確立することを目的として研究を行った.
方法および結果
LC/MS/MS法に用いる標識試薬には,1) 分析対象分子と高い反応性を有する,2) イオン化効率を高めるために容易にイ
オン化する構造を有している,3) イオン化抑制物質である塩や親水性化合物と逆相 HPLC で分離するために適度な疎水性を
有している,4) MS/MSにより特定の娘イオンを選択的に高い収率で生じる,などの条件を満たすことが必要である.
標識試薬として汎用されているベンゾフラザン化合物は,分子サイズが小さく反応性に富み,適度な疎水性を有している.
従って,イオン化効率の高いベンゾフラザン化合物はLC/MS用の優れた標識試薬になると考えられる.これまでに,イオン化
部位を有する親水性のベンゾフラザン標識試薬を開発し,これらの試薬と LC/MS 法を用いてペプチド類,脂肪酸類などの高
感度な分析法を報告した 1-7).
LC/MS/MS 法に適したベンゾフラザン標識試薬を開発するためには,MS/MS により特定の娘イオンを効率よく生成する構
造を見出すことが必要である.そこで,ベンゾフラザン化合物の構造と MS/MS による解裂様式との関係を詳細に検討した.種
々の置換基を有するベンゾフラザン化合物のMS/MS スペクトルを測定した結果,ベンゾフラザン骨格と結合したスルホンアミ
ド基の近傍で解裂が起き,選択的かつ高い収率で娘イオンを生じることが明らかになった 8-10).以上の結果を基に,カルボキシ
ル基を分析対象とした LC/MS/MS 用標識試薬として 4-[2-(N,N-dimethylamino)ethylaminosulfonyl]-7-(2-
10)
aminoethylamino)-2,1,3-benzoxadiazole (DAABD-AE) を,また,カルボニル基を分析対象とした標識試薬として 4-[2-
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