甲状腺肿疡の核DNA 量と生物学的悪性度に関する研究.pdfVIP

岡 山医誌 (1993)105,475～487 甲状腺腫瘍の核DNA量 と 生物学的悪性度に関す る研究 岡山大学 医学部第二外科学教室(指 導:寺 本 滋教授) 小 野 田 裕 士 (平成5年2月18日 受稿) Keywords:甲状腺癌,フ ローサイ トメ トリー,生 物学的悪性度, プ ロイデ ィパ ター ン,増殖期細胞 表1　対 象 緒 言 従来 よ り腫瘍 の良悪性 の鑑別,悪 性度 の解析 は病理組織学的な形態学的検索 に よって行 われ てきた.し か し,一般 に予後 良好 な甲状腺分化 癌 の中に も,組織型や組織学的進行度 かち推測 され る臨床経過 と異 な り,速 く進行 し不幸な転 帰 をた どる症例 がみ られ る.ま た,形 態学的に 濾胞癌 と濾胞腺腫 の鑑別 が困難 な症例 も存在す る.こ の よ うな点 を考慮す る と,甲状腺癌,特 に分化癌 の生物学的悪性度 を判定す る場合,病 理組織学的所見のみでは困難 と考 えちれ る. 腺腫11例,乳頭癌42例,濾胞癌18例,未分化癌 一方,近 年Flowcytometry(以下FCM) 6例,髄 様癌3例 であった(表1). に よる核DNA量 の測定が種 々の腫瘍 について 2.　方 法 行 われ,腫 瘍細胞 の診 断や悪性度 な どの観 点か 1)試料 の作製法 ら研究 が進 め られてい る1)-9).甲状腺腫瘍 に関す 試料 の作製 は切 除標本 のパ ラフィン包埋組織 る報告10)-20)も散見 され るが,良悪性 の鑑別,予 を用いて, Schutteちの方法21)に準 じて行 った 後判定な ど生物学的悪性度 の指標 としての有用 (表2).使用 した試薬及び溶液 の組成 は表3の 性 に関す る結果 は必ず しも一定 していない. とお りである.す なわち,組 織学的に確認 され そこで今 回著者は,甲状腺分化癌 の核DNA量 た病変部 よ りミクロ トームを用いて50μmの切 片 と生物学的悪性度 の関連 を知 る 目的で,甲 状腺 を5枚切 り出 し,これ を包埋 か ごに入れ,キ シ 分化癌 を中心 に各種 甲状腺腫瘍 の核DNA量 を レンにて1時 間脱パ ラフィンを行 った.同 じ操 FCMに よ り測定 し,臨床病理学的諸 因子及び予 作 を繰 り返 したのち,キ シレンを捨 て100%,95 後 との関連 を検討 した. %, 70%と濃度 の異 な るエ タノール にて各 々30 分 間再水和 を行 った.さ ちに3次蒸留水 中で30 対 象 と 方 法 分の再水和 を2回行 ったのち,Vindelφvのstock 1.　対 象 solution22)に溶解 した0.25%trypsinbufferの 1971年～1991年までに岡山大学 医学部第二外 入 った試験管 に移 した.これを37℃のwaterbath 科 で手術 された 甲状腺腫瘍初 回手術症例 の うち 中で,約15時間overnightincubationを行 い 80例を対象 とした.甲 状腺腫瘍 の内訳は,濾 胞 裸核化 し,ボルテ ックス ミキシング後静置 し, 47