日本台风过去长期変化関研究変迁.pdfVIP

Title日本における台風の過去の長期変化に関する研究の変遷 Author(s)片岡, 久美; 田宮, 兵衞 Citationお茶の水地理, 48: 90-97 URL /10083/34706 Rights Ochanomizu University Annals of Ochanomizu Geographical Society お茶の水地理 （ ), vol.48, 2008 日本における台風の過去の長期変化に関する研究の変遷 片岡　久美・田宮　兵衞 １．はじめに 宜上，最大風速の定義を満たしていない期間 の熱帯低気圧や，温帯低気圧化した後の擾乱 　日本において，台風の数や経路の長期変化 を含めているか否かを問わず，すべて台風の に関する研究は古くから行われてきている 研究として扱う． が，その目的や注目度は，時代と共に変化し 　WMO (1993) では，中心付近の最大風速 ている．地球温暖化の影響を評価するため， 32.7 m/s 以上の熱帯低気圧を，存在する海域 気候の長期変化に注目が集まる現在，過去の によって，ハリケーンやタイフーンなどに分 台風の長期変化に関する研究も重要性が高 類している．台風のうち最大風速が 32.7 m/s まっている．しかしながら台風の長期変化に 以上のものが WMO の定義するタイフーン ついては対象期間，分析方法などの違いによ に該当する．本稿においては台風とタイフー り結果の解釈が異なり，明瞭な合意は得られ ンの区別も行わず，いずれも台風の研究とし ていない． て扱うこととする． 　本稿では，今後必要とされる課題について 　気象庁に関連する記述は，特に断わらない の議論を容易にすることを目的として，過去 限り「予報作業指針」（気象庁 1974 及び 気 100 年程度の間に行われてきた台風の長期変 象庁予報部 1990）を始めとする気象庁出版 化に関係する研究の変遷を整理する．最初に， 物や気象庁の Web Page に拠る． 発生数，上陸数，経路など，台風の特徴別に， 長期変化に着目した研究の概要を示す．次に ２．長期変化の分析に使用される台風の特徴 研究目的の変遷に注目して全体を整理し，最 後に今後の課題について著者らの考えを述べ 2.1 発生数及び日本への上陸数 る．対象とするのは，日本気象学会誌 ｢天気 　長期変化を分析する際に，基本となるのが， ｣ や気象庁 ｢研究時報｣ に掲載されたものを 台風の発生数であろう．発生数の長期変化 中心とした 59 点の論文である． を議論するには，台風の定義の変更が問題と 　気象庁では，北太平洋西部（赤道より北で なる．1945 年までは熱帯で発生する強い低 東経 180 度より西の領域）において中心付近 気圧すべてが台風と呼ばれていたように（饒 の最大風速が 17.2 m/s 以上の擾乱を台風とし 村 1979），風速によって台風を定義し始めた ている．次節で述べるように気象庁による のは比較的新しい．これは観測技術の進歩に 台風の定義は時代によって異なる．また片岡