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映像表現論　　 Chapter 6　カメラとレンズ　（１）　焦点距離と画角 Chapter 7　カメラとレンズ　（２）　露出と被写界深度 1.光線束／針穴／ピンホール 物体（被写体）はあらゆる方向へ光を反射している。この光は「光線束」として考えることができる。このまま、被写体の前に感光体（フィルムやCCD）を置いても、光は拡散するばかりで、その像を記録することはできない。 しかし、感光体を暗い部屋の中に入れておき、その反対側の被写体の前の壁には穴（ピンホール）を設けることで、この穴を通る角度の光線束だけが通過して、反対側の壁（の感光体）に投影され、像を得ることができる。これがピンホールカメラの原理である。人類は、この現象については、古くから体験的に知っていた。 ピンホールカメラでは、この光線束が、ピンホール（針穴）をとおって暗い部屋や箱（すなわちカメラ）の中で錯乱円として投影されることで、像を得ることができるというものである。 小さなピンホールをとおる光線束は少なく、像は暗い。大きなピンホールをとおる光線束は多いので、像は明るくなるが、錯乱円も大きくなるので、像はぼやけてしまう。 そこで針穴の場所に、凸レンズを置くことが考えられた。光は透明な媒体を透過するが、形状?厚さ?密度の違う媒体との境界では、屈折現象をおこすという原理により、凸レンズは光線を屈折して１点に集め、焦点面（カメラの中のフィルムやCCDの面）に像を映すことができる。凸レンズの開口部は大きいので、より多くの光線束を得られるので、明るく鮮明な像を得ることができる。 2.カメラ?オブスクラ カメラ?オブスクラ（camera obscura）とは、ラテン語で「暗い部屋（箱）」といった意味である。暗箱の片方の穴に凸レンズを嵌め、焦点面にできる像をなぞることで、遠近法が正確なスケッチを描くことが可能となって、西洋絵画の遠近法の技法が確立された。この焦点面に、感光材を置いて、像を定着できるようにしたことで「写真」が誕生した。現在の撮影機械のことを「カメラ」と呼ぶのも、「カメラ?オブスクラ」がその語源である。 観光地に大きなカメラ?オブスクラを設けて風景を見せる施設は現在でも世界各地にある。日本では東京ディズニーシーのフォートレス?エクスプロレーションにある。東京情報大学4号館1階には、カメラ?オブスクラが常設展示されている。 3.主点と焦点／焦点距離 撮影用レンズは、何枚もの凸レンズや凹レンズが組み合わされてはいるが、全て単純な1枚の凸レンズに模式化して考えることができる。その凸レンズの光学的な中心を「主点」という。 このレンズ系の光軸に平行な光線＝ひらたく言えば太陽光線が凸レンズに進入して、レンズの下で太陽の像を結んだ場合、その場所が「焦点」である。 「主点」と「焦点」との間の距離のことを「焦点距離」という（複数のレンズが組み合わされたレンズの場合には、これは正しくは「合成焦点距離」であるが、通常はこれを「焦点距離」といっている）。単位はmm(ミリメートル)で表す。 レンズの屈折率の違いによって、焦点距離の長いレンズや短いレンズがある。 一つの凸レンズの光学系には、基本的には、一つ主点と一つの焦点があり、一つの焦点距離が定まっている。この一つの固定した焦点距離のレンズのことを、「単焦点レンズ」という（「単レンズ」とか「単玉」ということもある）。 「ズームレンズ」は、レンズ系全体としての屈折率を変化させることができ、この焦点距離を滑らかに変化させることができる。 4．焦点距離と画角 フィルムやCCDを焦点面に置いて、CCDの大きさの端とレンズの主点を結んでできる角度が、被写体を記録できる範囲＝画角となる。 フィルムやCC Dの大きさが一定の場合、短い焦点距離の画角は広くなる（「広角レンズ」となる）。被写体の周りを広く撮ることができ、フィルムのフレームの中での被写体の大きさは相対的に小さく写されることになる。これが広角レンズである。 長い焦点距離の場合、画角は狭くなる。このことによって、遠くのものが大きく写せることから、これを「望遠レンズ」という。「望遠レンズ」は、画角が狭いレンズなので、「広角レンズ」に対しては「侠角レン　ズ」という言葉が反対語ということになるが、そういう言い方はしない。 「画角」には、「水平画角」「垂直画角」「対角線画角」の３つがあるが、映像の用語で単に「画角」という場合は、「対角線画角」のことを指すので、注意が必要である。 焦点距離が一定の場合は、フィルムやCCDの大きさによって画角が変わる。例えば焦点距離50mmは、35ミリ版フィルムカメラ(対角線43mm)にとっては標準レンズだが、一般的なビデオカメラのCCDはごく小さい（対角線6～11mm程度）