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２１世紀の「働き方」 ―中小企業における労働意欲を高めるインセンティブ― 「平成１３年度 財団法人商工総合研究所 懸賞論文応募作品」 【表題：「ものづくり」基盤の再生に果たす中小企業の役割】 (要旨) 現在、中小企業では「モノづくり基盤」の根幹をなす熟練技能者の高齢化、後継者難、 及び後継者となる若者の製造業離れが深刻な問題となっている。それでは、どのようにし たら後継者となる若者が、製造業に関心を持つようになるのだろうか。 近年の技術革新により、製品はより高度化してきている。高度な製品を造るためには、 高性能な機械よりもむしろ熟練技能者の「匠の技」が必要不可欠になっている。さらに、 製品を造るための基盤技術分野は中小企業が担っており、どんな時代になってもその重要 性を失うことはないのである。 しかし、３Ｋイメージが定着している中小製造業であるため、若者は製造業に魅力を感 じていない。だが、実際現場で働く人々は、自らの仕事に生きがいや、やりがいを感じて いるのである。彼らは昇進や昇給といった経済的なインセンティブよりも非経済的なイン センティブのほうが労働意欲を高めているのである。 物質的面でのある程度の充実が図られた現代、消費者が求める製品も多様化し始めた。 消費者ニーズが多様化した現代においては、どんなに技術・技能自体のレベルが高くても、 製品が市場に評価されなければ、その技術に高い評価は与えられない。技術・技能を高め るための努力と経済的報酬との間の関係が曖昧になり、相対的に非経済的インセンティブ の重要性が高まったものと考えられるのだ。 非経済的インセンティブは、実際現場で働かなければ得られないものであるのだが、個 人が中小製造業の現場の情報を仕入れることによって、中小製造業とは、本当は魅力のあ る現場だと知るものであると考えられる。そのためには、情報を得る場を作るのではなく、 発信させる場を作るなどの社会的教育システムが必要である。そうすることによって、社 会全体の中小製造業に対するイメージの改善が図られ、若者にとって魅力のある企業へと 変化していくのではないだろうか。 目次 １．「モノづくり基盤の整備」をどう考えるか・・・・・・・・・・・・・・ １ ２・熟練技能者の必要性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ２ ３．重要性を増す非経済的なインセンティブ・・・・・・・・・・・・・・ ４ ４．なぜ、「非経済的なインセンティブ」が重要となってきたのか・・・・・ ５ ５．結論 ―積極的な情報発信を―・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ７ 参考文献・資料等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ９ 図表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・１０ 注）本論文は、平成13 年度財団法人商工総合研究所の懸賞論文応募論文に、卒業論文用に 加工・編集を加えており、実際の応募論文とは全く同じではないことをここに表記してお く。 ２１世紀の「働き方」 ―中小企業における労働意欲を高めるインセンティブ― １．「モノづくり基盤の整備」をどう考えるか （１）問題意識と結論 現在、中小製造業では「モノづくり基盤」の根幹をなす熟練技能者の高齢化、後継者難、 及び後継者となるべき若者の製造業離れが深刻な問題になっている。（図―１）いったい後 継者となる若者が、どのようにしたら製造業の現場に関心を持ち、モノづくりに参加した いと思うようになるのだろうか。 中小企業、とりわけ製造業で活動する中小企業に対する若者のイメージは、一般的には ネガティブである。製造現場は３Ｋ（きつい・汚い・危険）だと思っている若者が依然と 56 して多い。 現在はバブル期以前と比較すると、物質的・経済的な面において日本は豊かである。こ の豊かさを背景にした日本人の労働意欲を高めるには、昇進や昇給などの経済的なインセ ンティブよりも、もっと根本的なところでの‘働くことの意義’や‘仕事の内容’に注目 し、労働することによって得られる‘生きがい’や‘やりがい’、仕事をすることの楽しさ や、外部からの評価（感謝・賛美）といった、非経済的なインセンティブ57 を重視した政策 をとるべきではないかと考える。 （２）論点 以上の結論を導くために、以下の4 つの論点に