西原道雄先生古稀记念论集所200Biglobe.DOC

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西原道雄先生古稀记念论集所200Biglobe

西原道雄先生古稀記念論集所(2001.12)        信託と物権法定主義ーー信託と民法の交錯                                能見善久 1 はじめに  近年、信託がいろいろな場面で使われるようになってきた。かつては、貸付信託その他の金銭信託などが信託を用いた代表的な金融商品であったが、これらは銀行の預金と機能的にはあまり変わりがなかった。その意味では、信託を使っているとは言ってもあまり信託らしさは見られなかった。その後、住宅ローン債権信託その他の資産流動化スキームにも信託が使われたり、年金ファンドの管理?運用に信託が使われたり(年金信託)、信託制度の利用範囲が拡大された[1]。さらに、最近では、信託を積極的に担保として利用しようしたり(資産流動化も実質的には特定資産を担保とするスキームである)[2]、信託を用いて事業を行おうとする動きもある。  本稿は、こうした信託制度の利用の拡大が伝統的な民法の世界にもたらすインパクトについて考察しようとするものである。とりわけ重要なのは、信託の受益権が「物権に近い保護」(物権的保護)を受けるために[3]、信託によって新たに「物権」を作り出すに等しい現象が生じていることである。このような現象が「債権と物権」の区別を基本的な構造とする民法の世界と整合性を保ちうるのか、を検討することは民法および信託法の両方のにとって学問的に興味深い問題である。  信託受益者が物権的な保護を受けるということの意味については、後で詳しく検討するが、信託について必ずしも精通していない読者の便宜にために、簡単に信託制度を概観しておこう。本稿の扱うテーマとの関係では3つの場面が問題となる。  第1に、信託財産は受託者の名義となっているが、受託者の一般債権者は、信託財産に対してかかっていくことができないし、受託者破産の場合にも、信託財産は受託者の破産財団を構成しない(信託法16条)[4]。その意味において、受益者は受託者の一般債権者に対しては、「優先的な地位」が与えられる(もっとも、受託者の一般債権者は、信託財産に対して何らかの劣後する権利を有するというわけではなく、当該財産が信託財産であるとされればこれに対しては一切権利がない。従って、厳密には、信託財産を巡る受益者と受託者の債権者の間の関係は、取るか取られるかの関係である。この点に実は信託の特徴があると言ってよいが、このことの意味については後述する。)。しかも、信託財産が金銭の場合であっても、受益者は受託者の一般債権者に対して信託財産であることを主張できる。  第2に、受託者が信託財産を信託目的に反して第三者に処分すると、受益者はこの処分を取消し、信託財産を取り戻すことができる(信託法31条)。一種の追及効があるのである[5]。  第3に、受託者のもとにある信託財産が処分されたり、毀損されたりして、その代金や損害賠償金など、他の財産に転化すると、受益者はその転化した財産を信託財産であると主張することができる(信託法14条)。これを一般に信託法上の物上代位と呼んでいる[6]。抵当権などの物上代位と類似するが、信託における物上代位では代位物が一般財産に組み込まれる前の差押は要件とされていない。これはかなり強力な保護を受益者に与える。  以上のような物権的保護を受ける受益権にどのような内容を与えるかについては制約がなく、信託を利用して自由に作り出すことができる。たとえば、扶養目的で受益権を配偶者や子に与えたり(妻にその生存中は土地?建物を利用する受益権を与え、妻死亡後は土地?建物を処分して、その代金を均等に3人の子に与えるという信託など)、会社が従業員の年金のための信託を設定するなど、いろいろな信託が可能である。  これまでのように、信託の利用が預金類似の金融商品に限定されているうちは、受益権の物権的保護が本来の力を発揮するような場面はあまりなかった[7]。それゆえ信託は民法との関係を議論する必要もあまりなかった。信託は、信託法という特別法によって作られる別の世界であると割り切っていればよかった。しかし、最近の信託の利用の拡大は、民法の制度と競合する場面を多く生み出すことになり(たとえば、前述の家族の扶養のための信託は相続制度と競合するし、担保の機能を果たす信託では民法の担保制度との関係が問題となる)、両者の関係を改めて考え直す必要が生じている。両者の関係と言ってもいろいろあるが、本稿では物権法定主義との関係を中心に民法と信託法の関係を考察することにする[8]。 [1]これら各種の信託の利用例については、三菱信託銀行信託研究会編『信託の法務と実務(第3版)』(1998)および鴻常夫編『商事信託法制』(1998)を参照。 [2] 信託が担

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