备前粒江贝冢人骨-J-Stage.PDF

備前粒 江 貝 塚 人骨 長 谷 部 言 人 大正八年八月に行 はれた京都考古學敎 室第二回河内國府遺跡發掘の調査報告は翌九年九 月九 日發行 となってゐるが、實は同月二十月一部出來。直に濱 田博士 より誤植校正の爲 め、 私宛送付 された。 これに先だち同月十七 日付で、博士 より右報告に關す る要件の外、次の 如 き申越があった。 前「文略」 こゝに吉報昨 日入手致 し候、即ち岡山縣都窪郡羽島貝塚に於いて福原八郎な る人(紡績會社 の人に して金持か)去月發 掘遺物 と共に人骨拾體 を得た り、屈葬及び伸展 葬 あ りとの事にて、なほ調査 を續け度 く、當敎 室に向後一ケ年程人 手を借 り度 しとの申出 あ り、(自身出版 との事にて費用は凡て自辨す る事 、發掘費は福原氏勿論支 出す可 し)早速 島田君 を派遣致 し候つ もりにて電報にて照會候處 、先方の都合 にて來 る二十一 日參ること に相成候.實 は清野君 に も直に通知致 し度昨 日同君 を尋ね し處岡山縣へ行 きたる由にて、 更に家庭 に付 き行先 を尋候處 、古墳人骨採 集の爲 に秘密に赴 きた りとの話、い よい よ清野 式 を發揮す ることその獨逸式行動 には驚嘆致 し候。 言云、清野博士の二十日付はがきに曰 、 十六 日發赤磐、上道郡を巡 りて古墳骨13例を獲、之れより歸京の筈〓々。 とにか く右羽島貝塚は同 君未知の處 に候へ ど、同大學の人故全 く之を無視す ることも出來ず 、右福原氏 と談合の上、 小生は貴兄 と清野君 とに人骨研究上同等の權利 を與へ度決心に御座候 、已に里木貝塚に於 いて も同様の條件 を提供致 し置候事故、貴兄は少 くとも此の兩者 の各一部、 もしくは一方 の研究權 を御 占得の事 と御承知被下度候、發掘の時 日その他に關 しては島田君歸學の上可 巾上、小生 もその うち實地見聞の積 に御座候云 々。 尋いで二十五 日付で在備後國深安郡大門貝塚島田貞彦氏 よりの短信に曰く、濱 田先生 よ り御 聞承の事 と存 じ候が、小生先 日來當地方 に參 り、羽島貝塚 、青木貝塚 を小發掘 し、同 下備後國大門貝塚 を發掘 中に候、 こは御承知の如 く人骨出現地且つ津雲に近 き處にて土器 も津雲 と異 り面 白き研究地にこれあ り候。岡山の福原氏 より人骨出現の場合 には御依頼 あ るべ く、濱田先生 よりも小生 よりも御依頼致 し置 き候云々 、島田氏は更に同二十九 日付で 岡山縣兒 島郡粒江村粒江貝塚 より報 じて曰く、小生引續 き當地に滞在。昨 日より粒江貝塚 人雜　 ZZ　LVI-10　昭和16-X　 (35) 530　 長 谷 部 言 人 (今春清野博士が人骨十數體 を得 し處)1）を發掘致 し候。當地は二段 に分れ、上段は 人骨 を 主 とし、下段は土器(赤 焼に してそれに轟式の ミ、ズ張 りあるもの)のやゝ兩 者の中間と 認むべき尤 も面 白き處に候。昨 日この地 を發掘せ しに土器は勿論、共存 して彌生式の高坏 、 べ、人骨のヅガイ(破片 となる)三體、下層 より石器 を發以見候。 この土器 ば一寸他に類例祝 な く或ばアイヌ式 と彌生式 と互に交合す る中間に屬 して、む しろ彌生式に進みたるもの と 日下想像致 し候。上段 より人骨出現の場合 は御報候。 然 るに十月一 日認 め清野博士書翰によれば、「羽島貝塚は モ ウ全滅 にて、人骨は合計十一 出た由」及び同發掘に對す る某方面の策動 により事態紛糾の憂あること、人骨は何 と體か して京大へ持 ち來 り、同博士全速力で本年暮迄に全部整骨、私が暮 に京都へ行った 時十一 を公平 に兩名 にて分配 しよ う、尚同博士は三月八 日の船で歐羅 巴に向け出立す るか ら體、 簡單 な記載 を私の手で して と〓れとも書いてあった。事唐突で、了解 に苦 しむ節 もあった が、 前後 して入手 した四 日付濱 田博士の書面により一切の事情が判明 した。曰 く。島田君福原 八郎氏方 にあること十 日、羽島貝塚 よりその他諸貝塚 を調査 、昨 日漸 く一旦歸洛致 し候 、 この間(中略)大分面倒なことを生 じ閉 口致 し候 、福原氏は人骨測定は貴兄に依頼致 し度 由 な りしも、清野君の感情問題 もあ り、兎に角抽籤 を以て半數