色彩调节と工场配色.PDF

第5巻第7号 ユ59 色彩調節と工場配色 星 野 昌 　工場は生産の場であり，生産は人の力に支配される。 　明るい視野と暗い視野とでは眼の瞳孔の大いさの調節 働きよい環境は働く人の疲れを忘れさせ，能率を高め， が行われることはよく知られているが，このためにわれ 事故を少くする。好もしい雰囲気は働く職場に愛着を感 われの眼は不当につかれ，神経がいらだち易いことは案 じさせ，生産率を高め，欠勤を少くする。このようなこ 外見逃されている。われわれの作某場の色の明るさを作 とが色のもつ魔力から生まれてくることが今まで知られ 業上必要な程度に適量の差をっけ，その他には無用の董 ， ていなかった。現在ほど色が生産とむすびついたことは をっけないようにすることが眼を保護し疲れを少くする なかった。われわれはもつと色を積極的に利用しなけれ 上にどれだけ役立つかは，誰でも実験してみてはじめて ばならない。 その効果の大きいことに気付くであろう。 1 　〔4）精神作用と色 1　色と生産 　赤い色をみて興奮しない人は赤色盲か，よほど感情の 　人間のもつ五感の申で視覚はもっとも高度に生産や文 鈍い人であり，鈍い青い色をみて興奮する人はよほどの 化とむすびつくものであり，形態感覚は技術の根本要素 変入である。高い音と低い音の差のように，誰でも共通 の一つであることは誰もうたがわないことであるが，色 した感情を聯想するものであり，作業の種類や働く人の についてはそれほど重要性があるものとは思われていな 性別，年令を考えて最も適当な色を選ぶことは賢明であ かった。第2次世界大戦の前後から測色技術を支配する って・これによつて無用の刺戟をさけ，つかれをわす 色彩物理学と色彩心理学，色彩調和学が発達し色の科学 れ，または志気をたかめることができる。 的な解明が飛躍的に進歩し，芸術家や女性の遊び位に考 　（5）美的感覚と色 えられてきた色が，きびしい生産競争や販売競争の上に 　意匠的効果を重要視する施設では色が重要な要素とな 無視できない重要な因子になつてきたのである。それで ることは誰しも認めるが，工場のような実用的な生産施 は色がどういう形で生産にむすびついているかを解説し 設の場合でも美的効果は生産能率に大きい影響をもっこ てみよう。 とを見逃してはならない。それは美しく維持された工場 　（1）照明効果と色