脑外伤高次脑机能障害について.DOC

脳　外　傷 高次脳機能障害について 【はじめに】 　交通事故の死傷者数は、最近１０年間に３２％増加し１００万人を突破しています。救急医療の発達等により、死者数は、最悪事に比べ４６％減少する一方で、重度後遺障害者数は、１０年間で２倍に増加しています。今回は、この「脳外傷」「高次脳機能障害」に焦点をあて、医療や福祉の谷間で苦しんでいる方々の症状の理解と諸手続きについて説明いたします。 【脳外傷とは】 　脳外傷とは、生命維持、運動と知覚、学習思考や創作など、人間が生きていく上で大切な様々な機能をつかさどっています。脳は外側が硬い頭蓋骨で覆われ、直接傷つきにくくなっています。ところが、交通事故や転落等により強く頭部をゆさぶられることによって、脳組織が損傷を受け、機能が部分的に停止してしまうことがあります。脳組織の損傷状況から、医学的にはびまん性軸索損傷、脳挫傷、頭蓋内出血等と診断され、これらを総称して「脳外傷」といいます。 【障害】 　脳外傷によって起きる障害は大きく分けると、身体機能障害、認知機能（情報処理）障害、行動障害があり、社会復帰を難しくしています。その内容や程度はさまざまで、中でも若い人に多い認知機能障害等は外見から分かりにくいのが特徴です。 　脳外傷の認知機能（記憶、集中力）や行動（感情）に現われる高次脳機能障害は、直前のことを忘れる、集中力や意欲の低下、怒りっぽいなど、周囲の人に十分理解されておらず、円滑な人間関係や社会適応を困難にする要因となっています。 【高次脳機能障害の実態】 ①半側空間無視 自分が意識して見ている空間の片側を見落とす障害。具体的には、食事の際に左側の食べ物を食べ残す、ドアを通ろうとして左側にぶつかるなどの状態が見られます。 ②半側身体失認　 自分自身の身体像が歪んだり、身体の一部を自分のものでないように思っていたり、まひがあるのを認めないなどの症状が見られます。 ③地誌的障害（場所の認識の障害） 地理や場所についての障害です。よく知っている場所で道が分からなくなって迷ったり、自宅の見取り図や近所の地図が書けないなどの状態が見られます。 ④失認症　 視覚についての認知障害では、目は見えているのに、色、物の形、物の用途や名称が分からない、よく知っている人の顔を見て、誰なのかわからないという症状があります。この場合、手で触れてみたり、音を聞くなどすればわかります。また、聴覚、触覚についても同じような症状がみられることがあります。 ⑤失語症　 コミュニケーションの困難とは、話す、聞く、読む、書くなどの障害です。他の人に意思を伝えたり、他の人が伝えてきたことを理解したりすることが難しくなります。 ⑥記憶障害（健忘症候群）　記憶と学習の困難　 比較的古い記憶は保たれているのに、新しいことを覚えるのが難しくなります。約束したことを忘れたり、日時を間違えたり、場所が分からなくなり目的地へ着くことができずに迷い子になることがあります。日々の暮らしで、覚えておくべきことを忘れてしまうので、生活するのが難しくなります。 ⑦失行症（動作と行為の障害） 手足は動かすことができるのに、意図した動作や指示された動作が行えないという症状です。具体的には歯を磨こうとして、歯ブラシをどう扱ったらよいか分からず、歯磨きのチューブを口に持っていく、はしが使えない、靴の紐が結べなくなった等の状態です。 ⑧注意障害　注意力?集中力の低下 一つのことに注意を集中したり、多数の中から注意して必要なことを選ぶことなどが難しくなります。気が散り、疲れやすいため数分しか集中できないこともあります。 ⑨遂行機能障害（前頭葉障害） 生活する上で必要な情報を整理し、計画し、処理していく一連の作業（目標を決める→計画する→手順を考える→実施する→結果を確認する）が難しくなります。その結果、生活上起こる様々な問題を解決していくことが困難になります。この際、動作をはじめるのが難しかったり、中断するのが難しくなることがあります。 ⑩行動や情緒の障害 ちょっとした困難でも著しい不安を示したり、逆に興奮して衝動的になったり、一種のパニック状態に陥ってしまうことがあります。反対に、自発性が低下して自分からは動こうとしない状態を示すこともあります。これらの状態が混在していることがあり、状況によっては、反対の行動を起こすこともあります。 ?症状のまとめ これらの症状は、慣れた環境や作業においては軽減し、疲労してくると増大するなど、時間や状況により著しく変化します。おかれている環境を考え合わせながら、症状を捉えることが必要です。またこれらの症状は重複していることが多く、症状の重なり方によって障害のある人の状態は一人ひとり異なっています。 【障害年金受給について】 支給を受け