宇宙岚に挑むERG-JAXA宇宙科学研究所.PDFVIP

ISSN 0285-2861 JAXA宇宙科学研究所 ニュース 2017 6 No.435 宇宙探査実験棟と M-Vロケット実機模型 「宇宙探査実験棟」の運用が始ま りました。今年２月末の建屋工 事完了後からこれまでの間、建 屋内の実験設備などの整備をす すめていましたが、５月より探 査ロボット等の実験を開始して います。（P.5参照） 宇宙科学最前線 Ｘ線で観る宇宙最大の衝撃波構造 オランダ宇宙研究所 赤松 弘規　（あかまつ ひろき） 宇宙最大の重力的に閉じた天体：銀河団 宇宙で最も劇的な天文現象：銀河団衝突 　現在までに構築されてきた宇宙構造形成の理解に基づ 　銀河団同士の衝突は、ビッグバン以降宇宙で最も劇的 くと、現在の構造は宇宙初期に存在する密度揺らぎが成 な天文現象である。衝突現象に伴う重力エネルギーが衝 長し、その重力により、周囲の物質をさらに引き寄せ、 撃波（P.5 今月のキーワード参照）、乱流を通じて、銀河 より大きな構造へと成長してゆくと考えられている。銀 団プラズマの加熱（熱的エネルギー）、粒子加速（非熱 河団とは、その名の通り銀河が 100 〜 1,000 個集まっ 的エネルギー）へと分配される。実際に、Ｘ線観測から て形成されている天体である。１つの銀河団の差し渡し 衝撃波加熱によって形成されたと考えられる超高温領域 の大きさは百万パーセク（Mpc）にもなる（１パーセク： の存在、また、粒子加速については電波帯域のセンチ波、 １pc は 3.26 光年）。ビリアル定理に基づき、銀河の運 メートル波の観測により、数十 GeV にまで加速された 動エネルギーから銀河団の質量を推定することにより、 電子による Mpc スケールに広がったシンクロトロン放 銀河団は太陽質量の 1013 から 1015 倍もの質量を持つ宇 射から確認されている。図２左に、“ 弾丸銀河団 ” とし 宙で最大の天体であることが明らかになった。銀河団の