冈崎善弘1井邑智哉2高村真广3德永智子-J-Stage.PDF

原著論文 夏休みの宿題に取り組む計画・実際の一致と取り組み方がストレスに与える影響 The Correspondence between Plan and Actual Approach in Summer Homework and the Differences in Approach to Do Summer Homework Influences Children’s Stress 1 2 3 4 岡崎善弘 ・ 井邑智哉 ・ 高村真広 ・ 徳永智子 1 2 3 4 岡山大学 ・ 佐賀大学 ・ 広島大学 ・ 岡山大学 要旨 夏休みの宿題は短期間で終えることができないため，児童は夏休み前に取り組み方を計画する。本研究は，小学生 (小 学4年生～6年生) を対象として，計画した通りに宿題に取り組むことができたのか調査した。宿題に取り組む計画を事 前に調査し，長期休暇が明けた後に実際の取り組み方を調べた結果，長期休暇の前半で宿題を終える計画 (前半集中型) は破綻している割合が他の計画タイプよりも高かった。さらに，宿題の取り組み方と夏休み明けのストレスの関連を調 べた結果，夏休みの後半から宿題に取り組んだ児童は他の児童よりストレスは高いことが示唆された。 目的 夏休み直前になると，学校は子どもたちに夏休み用の宿題を与える。夏休みの宿題は学習指導要領に含 まれていないが，学習習慣の維持や学習内容の復習を目的としている (北濱 2012; 徳永・井邑・高村・ 岡崎 2014; 渡辺 2009)。夏休みの宿題の内容は各学校の裁量で決められており，宿題の量は決して少なく ない。 夏休みの宿題の取り組み方に対する関心は高く，多くの民間企業が子どもの夏休みに関する調査を実施 している。近年ではインターネットを用いた大規模な調査が実施されている。例えば，自然科学観察コンク ール (2016) は20 歳以上の大人 (723 名) を対象に調査を実施しており，子どもの頃の夏休みの宿題の取り 組み方を尋ねた結果，「締切日ギリギリにまとめて終わらせていた」という回答の割合が高かったことを報 告している。 夏休みの宿題は多く，短期間で終えることが可能な量ではないため，宿題に取り組む計画に関する指導 が夏休み前に行われることは一般的である。しかし，夏休み中に宿題をすべて終える計画を立てるように 指導しても，計画した通りに宿題を遂行することは難しい (例えば阿久津 2017)。明光ネットワークジャパ ン(2017) は保護者 (558 名) を対象に調査を実施しており，「子どもは，計画した通りに宿題に取り組めて いない」と回答した保護者は約6 割だったことを報告している。時間の管理は一般的に大人でも難しく (例 えば，Roy, Mitten, Christenfeld, 2008; Kahneman, Krueger, Schkade, Schwarz, Stone, 2004)，計画した通りに 宿題に取り組むことは児童でも難しいと思われる。そこで，本研究では，宿題に取り組む計画と実際の取り 組み方の調査を行い，計画した時の取り組み方が実際の取り組み方と一致しているのか調べることを第 1 の目的とする。 計画した通りに宿題に取り組むことができていなかった場合，想定していた以上に宿題が多く残ってい るため，夏休みの宿題がストレスに影響を与えている可能性は高い。実際，夏休みの宿題がストレス要因で あることを示唆する報告は数多く存在する。例えば，バンダイ (2017) は保護者 (840 名) に対して調査を 実施しており，「夏休みで気にかかること」を尋ねたところ，「夏休みの宿題」という回答が最も多かった。 － 1 － また，保護者や周り