呼吸器系疾患-YCU横浜市立大学.PDF

６)呼吸器系疾患 ①呼吸不全 （１）指導のポイント 呼吸不全の定義、病態、治療に必要な呼吸生理、医療面接・身体診察・基本的な検査による主要な 基礎疾患の鑑別診断、呼吸不全の治療のポイントを理解させる。 呼吸不全は、動脈血中の酸素分圧(PaO )および炭酸ガス分圧（PaCO）で規定される病態であり、主 2 2 観的な症状である呼吸困難(感)とは異なる。PaO ＜60 mmHgが呼吸不全で、PaCO＜45 mmHgがⅠ型 2 2 呼吸不全、PaCO≧45 mmHgがⅡ型呼吸不全である。60 mmHg≦PaO≦70 mmHgが準呼吸不全であ 2 2 る。呼吸不全出現１ヵ月までが急性呼吸不全であり、１ヵ月以上が慢性呼吸不全である。また、慢性呼 吸不全の急性増悪がある。これらの基本的事項を理解させる。 呼吸不全は、単に心肺の異常のみではなく、呼吸中枢、頸髄、横隔神経・横隔膜など呼吸に関与す る神経・筋、胸郭・胸膜、上気道、下気道・肺胞、心・肺循環の異常で生じ、その基礎疾患は多彩である。 これらを理解した上で、呼吸困難を訴える患者の診療にあたっては、呼吸不全があるかどうか、次に、 迅速な処置・治療が必要かどうかを判断することが重要である。 まず、パルスオキシメーターを施行し、SpO 90％がPaO 60 mmHgに相当するので、SpOが90％以 2 2 2 下なら、直ちに動脈血ガス分析を行い、Ⅰ型かⅡ型かを判断できるよう指導する。医療面接、身体診察、 胸部X線写真、心電図、血算生化学検査を行い、主要な疾患につき鑑別診断できるように指導する。 治療については、急性呼吸不全なら、酸素投与(1－2L/分)、血管確保を行い、迅速な処置が必要と 判断すれば、救急医、呼吸器内科医、循環器医の応援を要請させる。Ⅱ型呼吸不全では、肺胞低換気 が基本的病態であることを理解させ、また、CO 2ナルコーシス予防のため低濃度の酸素投与を行う重要 性を理解させる。勿論、基礎疾患に対する治療の重要性も理解させる。 （２）研修されるべき具体的な目標 呼吸不全 面接・診察 検査・診断 治療 患者への説明及び支援 目標 ●症状の出現時の状●動脈血ガス分析を ●呼吸不全に対する ●急性呼吸不全に対 況、呼吸困難の程 行い、Ⅰ型呼吸不 治療と基礎疾患に対 しては、その基礎疾 度・持続期間・その推全、Ⅱ型呼吸不全の する治療の２つがあ 患に対する治療指針 移、基礎疾患(特に心鑑別ができる。 ることが説明できる。を説明できる。 疾患、呼吸器疾患)の ●胸部X線写真、心 ●酸素投与の際にⅠ ●慢性呼吸不全に対 有無、などを聴取し、電図、血液検査など 型とⅡ型呼吸不全に しては、その基礎疾 急性、慢性、急性増から、主要な疾患で対する基本的な相 患に対する治療指針 悪の鑑別ができる。 直ちに処置を要する 違、すなわち CO2 ナ に加え、長期管理上 ●バイタルサインを疾患、すなわち、心不ルコーシスを惹起す の注意点、具体的に 把握し、さらに、起座全、気管支喘息発 る可能性があるかど は、禁煙指導、インフ 呼吸・喘鳴・チアノー うかが判断できる。 ルエンザ・肺炎球菌 作、肺塞栓症、緊張 4-230 ゼの有無が診断で 性気胸、COPD (慢性●人工呼吸管理が必 ワクチンの重要性、 き、胸部身体所見な 閉塞性肺疾患)の急 要