太宰治飨応夫人.docxVIP

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  • 2023-12-20 发布于上海
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饗応夫人太宰治

奥さまは、もとからお客に何かと世話を焼き、ごちそうするのが好きなほうでしたが、いいえ、でも、奥さまの場合、お客をすきというよりは、お客におびえている、とでも言いたいくらいで、玄関のベルが鳴り、まず私が取次ぎに出まして、それからお客のお名前を告げに奥さまのお部屋へまいりますと、奥さまはもう既に、鷲(わし)の羽音を聞いて飛び立つ一瞬前の小鳥のような感じの異様に緊張の顔つきをしていらして、おくれ毛を掻(か)き上げ襟(えり)もとを直し腰を浮かせて私の話を半分も聞かぬうちに立って廊下に出て小走りに走って、玄関に行き、たちまち、泣くような笑うような笛の音に似た不思議な声を挙げてお客を迎え、それからはもう錯乱したひとみたいに眼つきをかえて、客間とお勝手のあいだを走り狂い、お鍋(なべ)をひっくりかえしたりお皿をわったり、すみませんねえ、すみませんねえ、と女中の私におわびを言い、そうしてお客のお帰りになった後は、呆然(ぼうぜん)として客間にひとりでぐったり横坐りに坐ったまま、後片づけも何もなさらず、たまには、涙ぐんでいる事さえありました。

ここのご主人は、本郷(ほんごう)の大学の先生をしていらして、生れたお家もお金持ちなんだそうで、その上、奥さまのお里(さと)も、福島県の豪農とやらで、お子さんの無いせいもございましょうが、ご夫婦ともまるで子供み

たいな苦労知らずの、のんびりしたと

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