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効用水準とエネルギー消費量に影響を与える 都市構造と交通特性に関する研究 Yanhong YIN1 2 ・溝上 章志 1学生会員 熊本大学博士後期課程 大学院自然科学研究科（〒860-8555 熊本市黒髪2-39-1） E-mail: 095d9406@st.kumamoto-u.ac.jp 2正会員 熊本大学教授 大学院自然科学研究科（〒860-8555 熊本市黒髪2-39-1） E-mail: smizo@gpo.kumamoto-u.ac.jp 持続可能性の概念は今後の都市開発における重要なパラダイムであり，それを達成する一つの有効な方 法としてコンパクトシティ政策が注目されている．本研究では，交通サービスに加えて一般財の消費も含 めた個人の効用関数を定義し，彼の現在の効用水準を維持するという条件の下でエネルギー消費量を最小 化した場合，最適な財の消費パターンが実績消費パターンとどれほど異なっているかによって都市のコン 2 パクト性を評価するモデルを提案する．このモデルを熊本都市圏の 時点，および長崎都市圏にも適用し， どのような都市構造や交通サービスが現在の効用水準を維持した上でのエネルギー消費量削減に貢献する かを実証的に明らかにする． Key Words : sustainable urban development, compact city, energy consumption 1. はじめに ギー消費量を削減するのではなく，現在の個々人の効用 水準を低下させずに，いかに都市全体のエネルギー消費 自動車中心社会の進展は我々の生活に多くの恩恵をも 量や環境負荷量を削減させるかが問われている．このよ たらした半面，都市のスプロール化や公共交通の衰退に うな中で，現在の交通モビリティ水準を維持しながらエ よる交通弱者の移動可能性の低下，中心市街地の空洞化 ネルギー消費量を最小化させる交通パターンを求めるミ などの問題が顕著になっており，従来の都市政策は大き クロ経済モデルを提案し，それを達成するための都市構 な転換期を迎えている．また，化石燃料の枯渇や地球温 8) 9) 造や交通政策について検討した近成ら や土井ら の一連 暖化などの問題を受け，エネルギー消費量の削減の必要 の研究は興味深い． 性が求められている．近年では，これらの問題を解決す しかし，都市の諸活動は交通サービスだけでなく，そ る手段のひとつとして，持続可能な都市形態の一つとし の他の財の消費によって支えられている．また，たとえ てのコンパクトシティが注目され，関連する多くの研究 エネルギー消費量の削減政策が導入されても，少なくと がなされている．例えば，単位トリップあたりのエネル も現況の効用水準が維持されなければ，その施策は支持 ギー消費量や環境負荷量といったマクロ指標の都市間比 されないであろう．つまり，交通サービスに加えて，一 較や都市構造との関係性を分析したNewman Kenwor- 般財の消費も含めた個人の効用関数を定義し，彼の現在 thy1) の研究は著名である．さらに，都市機能の集積圏域 の効用水準を維持するという条件の下でエネルギー消費 と集積密度の視点から都市構造のコンパクト性の評価を