生物生息環境改善施策の評価①埋立地より沖合側の水深.pdfVIP

４．１．２ 生物生息環境改善施策の評価 ①埋立地より沖合側の水深を明治時代の水深としたケース（対象種：アサリ） まず、現在及び明治時代の東京湾の水深分布について、図-4.1.2.1 と4.1.2.2 に示した。 明治時代と比較して現在のほうが、特に沿岸部分において水深が深くなっていること が分かる。 図-4.1.2.1 東京湾の水深の分布(現況) 図-4.1.2.2 東京湾の水深の分布( 明治時代) 139 現在及び明治時代の水深分布を入力した場合の HSI を図-4.1.2.3 および4.1.2.4 に示し た。船橋市から千葉市にかけてと横浜市から川崎市にかけての両地域で HSI 値がやや 改善しているが、その値は 0.1 程度にとどまっている。また、盤州干潟付近ではほとん ど変化が見られず、全体的に生息環境の改善効果は低い。この理由としては、次の 2 点が考えられる。 ・ 現在埋立地となっている箇所は、明治時代多くのアサリが生息していたと考え られる。しかし、今回の検討においては埋立地より沖合側の水深のみを変更し ているため、水深を浅くしたことによる効果が小さい。 ・ 水深以外の底質データ等が現況のままである。 図-4.1.2.3 アサリの HSI(現況) 図-4.1.2.4 明治時代の水深によるアサリの HSI 140 ②花見川河口沿岸域に干潟を造成したケース（対象種：アサリ） 次に、花見川河口沿岸域に干潟を造成し、干潟造成部分における水深値を現状の-50% まで浅くし、底質を SI=1 相当としたケースについて検討を行った。図-4.1.2.6 から、 干潟を造成した場所におけるアサリの HSI 値が大幅に改善していることが分かる。 ­ 0 5 10 20 km 図-4.1.2.5 花見川河口沿岸の干潟造成検討範囲 HSIHSI最大値最大値 （（HSI=0.66HSI=0.66）） 図-4.1.2.6 アサリの HSI(花見川河口沿岸域に干潟を造成した場合) 141 ③東京湾全体の水中光量・底質を改善したケース（対象種：アマモ） ここでは、アマモを対象種として東京湾全体の底質を SI=1.0 相当に、水中光量を現 況の 2 倍相当まで改善した場合について検討を行った。アマモの HSI 値は、盤州干潟 で広範囲にわたり高い値を示した他、葛西臨海公園前面海域においても高い値を示し た。また、もともと良好な値を示していた三番瀬で更に改善される傾向を示した。し かし、東京湾全域において底質と水中光量の値を設定したにもかかわらず HSI 値の上 昇は一部のみにとどまっていることから、随所でアマモ場の回復は図れる可能性はあ るものの、連続した藻場の創造には相当の環境改善が必要と考えられる。 図-4.1.2.7 アマモの HSI(現況) 図-4.1.2.8 アマモの HSI(東京湾全域において底質と水中光量を改善した場合) 142