波浪推算モデルMRIとMRI－Hの相互比較研究.pdfVIP

波浪推算モデルMRIとMRI－Hの相互比較研究＊ 1．序 　1981年に10の波浪推算モデル（波モデル）のグループが米国，ヨーロッパ，日本から参加して波 モデル相互比較研究が行なわれた。この研究はIUCRMの波浪の力学と海面の電波探査のシンポ ジュウムの中の一つのテーマであって，その結果は同シンポジュウムのプロシーディングとして出 目的は風で生じる水の表面波の物理についての理解が現時点でどのように波モデルに反映している かをテストすることであった。この研究は，実験や理論だけでなく波モデルの数値的取り扱いにつ いての将来の指針を得ることに特に役立つと考えられる。この研究に残々が開発した第一世代に属 も参加した。その結果，このモデルは波高の推算の点では特に欠点はなく，しかも複雑な風系での 性能は優れていることが確認された。しかし，このMR　Iは風波のパラメータ表現を利用した第二 世代の波モデルに較べ，発達初期の風波のスペクトルの形をうまく表せないことも明らかになった。 この点を改良するため風波のパラメータ表現を利用した波モデルMRI－Hを新たに作成した（Uji 1984）。 　この新しい波モデルMR　I－Hの性質を明らかにしておくことは，利用の便に供する意味から重 要である。さらに，MRI－IIは，波浪の数値的表現および波浪エネルギーの伝播を計算する工夫 が旧いMRIと全く同じであるとζろから，数恒的取扱による結果の差異はこれらのモデル相互の 間には生まれないので，両者の結果を比較することはモデルの基礎となっている物理的仮定の違い を浮かびあがらせる意味で特に有効である，この意味で，この相互比較研究は波モデルの将来の発 展に取っても，重要な基礎データを提供し得ると考えられる。このような理由で，新しいMRI－ 1984には上記の相互比較研究の過程で作図された全ての図は収録されていないので，ここにはそ 図の番号は図15－7．4－1。のように示されている。即ち，最初の15は本誌全体の通し番号，二 ＊宇治　豪　　海洋気象研究部 一1一・ 気象研究所技術報告　第15号　1985 はその番号を0にしてある。 2．モデルの概説 　波浪の推算には， 一∂F 　　＋の・▽F－Snet－Sin＋Sn1＋Sds （2，1） ∂！ で表されるエネルギーバランスの式を用いている。ここでF＝F（σ，θ；劣，！）は波浪の2次元 スペクトル，σは角周波数，θは成分波の進行方向，cg一（わ（σ，θ）は成分波の群速度，S．eゼ は成分波が単位時間に得る全エネルギーを，Si．は風から波へのエネルギーの流入を，S．1は非線形 相互作用による成分波相互のエネルギー輸送を，Sdsはエネルギーの散逸を表す。なお，オは時間 文は場所である。式（2．1）の右辺にある3net，（Si．，S．1，3dS）については厳密な意味では未 だ全てが明らかになってはいない。この3。etの表現の仕方と波浪の数値的表現方法によって色々 な種類の波モデルが存在する。 2．1　波モデルMRl 　このモデルではSnetの内容として，順風による線形および指数関数的成長，波浪が成長すると共 にピアソンーモスコビッツ（P－M）のスペクトルで表される平衡状態1召近づくような形をした砕 波の効果，成長しすぎた成分に対する摩擦によるエネルギーの散逸および逆風の効果が考慮されて いる。波之波の相互作用と，浅海効果は無視している。 数値的1こは波のエネルギー脅351個．（16方埣×22周波数成分）のスペクトノレ成分で表現している・ 波リエネルギーの伝播の計算にはエネルギーの空間分布の歪みを防止する工夫がなされている（Uji an（1　1sozaki　1972）。 　MRIでは波浪のスペクトル成分と風との関係を次の三つの過程に分けて取り扱かっている。各 々の過程における3netは次のように表される。 　　3net一い＋β・F）〔1一（F／F。。）2〕T（θ一θw）， 　　　　　　　　　　　　　1θ一θwl≦90・，F≦1．41カ。。， 　　Snet一一D・∫4F，1θ一θwIF≦90・，F＞1．41F。。， 　　Snet＝一〔B・r（θ一θw）＋D・f4〕F，　1θ一θw　l＞900 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2．2） ここで，AとBは風速