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魚類加工品の低アレルゲン化に関する基礎的研究 53 魚類加工品の低アレルゲン化に関する基礎的研究 嶋 倉 邦 嘉(東京水産大学食品生産学科助手) た8)。われわれの研究 とは別に,Sakaguchiら9) 1.は じ め に も魚類ゼラチン(変性 コラーゲン)がアレルゲン 近年,食物アレルギー患者は増加傾向にあり大 になることをつい最近報告 している。 きな社会問題 となっている。アレルギーの原因食 魚類の消費量が多いことに加 えて魚類は主要な 物 としては卵,牛乳,米,大 豆などの農畜産物が アレルギーの原因食物であるので,わが国の水産 世界的に有名で,食物アレルギーの研究はこれ ら 業界 においては安全な低アレルゲン化魚類加工品 の食物を中心 として展開されてきた。アレルギー の開発が強 く望まれている。そこで本研究では, 誘起物質(ア レルゲン)の単離同定,エピ トープ 魚類アレルゲンとしてのコラーゲンの重要性を評 解析など多 くの知見が集積 され,牛乳や米などで 価するとともに,魚類加工品として魚肉練 り製品 はすでに低アレルゲン食品が開発 され,市販 され と魚肉エキスに着 目し,パルブアルブミンとコラ ている。一方,魚貝類の消費量が多いわが国では, ーゲンの両者を念頭に置いてその低アレルゲン化 厚生省の 食「物アレルギー対策検討委員会」が平 の検討を行った。 成9年度に実施 した調査により,魚類は卵に次い 2.魚類アレルゲンとしてのコラーゲンの で主要なアレルギー原因食物であることが判明し 重要性 ている。魚類アレルギー としては古 くから北欧の タラによるアレルギーが有名で,タラから単離 さ メバチ筋肉か ら精製 したパルブアルブミンおよ れた主要アレルゲンGadc1は筋形質タンパク質 びコラーゲンを用い,魚類アレルギー患者の血清 のパルブアルブ ミンであることが明らかにさ 20検体 を対象に血中IgEとの反応性 をELISA れi,z),そのIgE結合エピ トープも解明されてい によって調べた。パルブアルブミンは既報6)に従 る3)。その後,サ ケ類4),コイ5),マアジ6)の主要 い,筋肉の加熱抽出液をゲルろ過(SephadexG アレルゲンもパルブアルブミンであることが示 さ -75)および逆相HPLC(TSKgelODS-120T) れ,魚類の主要アレルゲンはパルブアルブミンで に供 して精製 した。 コラーゲンはMillerらの方 あると結論 されている。主 として欧米での研究に 法°》に従い,酢酸抽出および塩沈殿により精製 し 基づいて導かれたこの結論がわが国でもそのまま た。患者血清 とパルブアルブミンおよびコラーゲ 受け入れ られてきたが,最近われわれは,魚類に ンとの反応性 には,1)パルブアルブミンのみに パルブアルブミンとは異なる高分子アレルゲンの 陽性,2)コラーゲンのみに陽性,3)両方に陽性, 存在を見出した7)。さらに,メバチから高分子ア 4)両方に陰性 とい う4つのパターンがみ られた レルゲンを精製 してコラーゲンであることを証明 (図1)。血清20検体の内訳を表1に示す。パルブ するとともに,わが国にはコラーゲンを認識する アルブミンのみ と反応する血清が12検体 と半数以 魚類アレルギー患者が少な くないことを示唆 し 上を占め,さらにパルブアルブミンとコラーゲン 54 浦上財 団研究報告書Vol.9(2001)