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企業における人間関係の改善について 一一エンカウンター・グループの導入一一 畠瀬 稔 人間関係研究会資料必 8 企業における人間関係の改善について 一一一エンカウンター・グループの導入一一一 畠 瀬 稔 企業にお貯る人間関係の問題 日本の企業の最大の弱点は，企業内の人間関係改善への対策ではなかろうか。目下叫ばれている コンビ品ーターやオーメーシ冒ンといった機械を使つての合理化の嵐の中に，企業内の人間関係改 善の問題はますます影が薄くなって行くように思われる。 しかし，コンピューターを操作するのも，プログラムを作るのも人間である。一見，超近代的な 設備を誇る工場であっても，そるに働く人間伺土の人間関係やそれを組織化している組織のあり方 が旧態依然とした古いものであっては，職場の士気を抑え，結局は生産能率を低めるということが， 案外気づかれていないのではなかろうか。気づいている人たちも，よい対策のないまま看過してき たのではなかろうか。 し.1: 例えば，ある企業において同一部門に属するAさんとBさんはどうも性が合わない。お互いにい つも批判的な気持をもち合って仕事をしているとする。すると，協力すべきところも避け，連絡す べきことも必要最低限となる。その結果， AさんとBさんの聞のコミ晶=ヶーションは歪められが ちであるし，誤解や不信にもとづいた伝達では生産工程にも大きなマイナスが生ずることになる。 これが課長級のCさんとDさんの間柄であるとすると，一層マイナスの度合は大きくなろう。会議 の度にCさんとDさんは反対のための反対をくり返し，プラン作成の時聞は大幅に浪費されること になる。さらにそのCさんとDさんの葛藤が部下の人たちにも及んで， C課の人たちとB諜の人た ちの聞のコミ品ニケーションが十分でき兼ねるといった事態が起こるとすると，その企業全体にと って由々しい問題ではないであろうか。ところが現実の企業の中にはこの種の対立や葛藤が至ると ころにあれそれによる時間とエネルギーのマイナスは恐るべきものであると思う。 以上は特定の個人の聞の葛藤や対立の例であるが，今ひとつμ職階制御という，組織のもつ人間 関係の影響を考えることができる。普，軍隊には二等兵を出発点して，一等兵，上等兵といった具 合に順次に上がって行〈階級というものがあった。そこには上官の命令には絶対服従という厳しい 権力支配の構造が確立していた。これほどはっきりと権力支配を公認した階級制は現在見られない と思うが，大学には助手，講師，助教授，教授という職階級が厳然と残っているし，企業にも平社 員，係長，課長，部長，社長，その他次長や代理といったさまざまの名称をもった職階らしきもの が存在している。これは職務内容上から，上に行くほどより大きな管理の責任や運営を任されると いう重要な意味をもっ場合もあるが，この職階制自体が全員のエネルギー結集の妨げとなっている -1ー 場合のあることをしばしば観察する。それが端的に現われるのは，管理職にある人だけに責任を任 し，部下は上司の命令に従っておればよいのだという無責任的雰囲気を惹き起こす時である。また， 課長の方でも，いつも「課長/Jと呼ばれていると，課長らしき権力を手に入れたような錯覚を起 こし，その権力者ぶりが知らず知らず行動の端々に出ることになる。部下の方も，課長に対する時 は同僚に対するのとちがった態度をとるようになり，敬して遠ざけたり，内心反対意見をもってい ても課長の言う通りにしておれば，例え失敗しても責任は自分にはない，という気持になっていく。 このようにして，組織が大きくなればなるほど，社長は社員たちがどのようなことを考え，現在 のその企業の仕事に生き甲斐を感じているのかどうか，企業の方針をどのように受けとめているの か，内心気になりながらも，直接に一般従業員たちの声を聞げないというジレンマを経験する。そ して，社長の耳に入る声は，一部のとり巻きのおべっかであったり