資本等式(説)の系譜と課題.PDF

第20巻第3号（1984．3） 資本等式（説）の系譜と課題 久　野秀　男 　　　　目　次　　　　A．M。，ghi，，　H．　S，，ph，。s）エM。i，＆i 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　F．W．C，。。h。1m　　　　　i 1， 「資本等式」の功過　　　　　　　　　　　　　i （1）論　　旨 IV’．　米国古典簿記書における「資本等式」 　の先駆的業績とその顯末；T．Jones，　B． （2）ProprietorからProprietorshipへ （3）暗唱的方法から代数学的方法へ （4）伝統的な成果計算志向の喪失 　＆H．R．　Hatfie！d Dt　schema V．　わが国における「資本等式」の先駆 　的業績；東爽五郎 皿．英国古典簿記書における「資本等式」 　の先駆的業績とその顛末；A．Malcolm，VL　結　　語 着想を前代の著者等あるいは他国の著者等か 1．　「資本等式」の功過 ら直接うけついでいるという結論を出すべき ではない。ここに集収したかかる貧弱な資料 　（1）論　　旨 だけでは，この着想の発展および著者達の相 　筆者（久野）は，資本等式（説）に関する調 互のかかわり合いに関するはっきりした筋道 査・研究にっいて，論文や拙著の一部で論及 を明らかにすることは不可能である」 してきたが，本論叢の紙面をかりて，現在ま 　にもかかわらず，あえてこの『拙論』を公 でのこのテーマに関する研究のいわぽ「総 表するゆえんは，その数は問わないことにし 括」をしてみたい。また，補足すべき資料は て，あくまでもoriginal　texts（といっても， 検討し摂取して内容を充実したいとも思う。 その多くはゼロックス版や複製本ではあるが）に 　とはいっても，ここに取上げた簿記諸家の ついて，つまり孫引きの資料によらず，虚心 数は内外とも僅かに11名，簿記書の数は13 に自身で考究し判断してみたいとかねがね願 冊程度にすぎない。また，関連する諸家を っていたからである。諸賢の御教導を得たい。 加えても内外に十数名程度である。この研究 領域の先駆者リトルトン（A．C。　Littleton， Accounting　Evolution　to　1900．，『会計発 gleichung）は，これを簿記の教授（ないし学 達史』，Part　II．　XI．　p．166）のひそみになら うならば，まさに，「これらの著者達を，と の側面からみた場合には，捨て難い長所をも やこう年代順にならべてみたところで，それ によってただちに，後代の著者達が，彼等の の出現は，擬人説（仮想人格説）ないし受渡説 1 の万能の時代にあっては（とくにわが国の場 　しかし，資本等式（説）は，否定し難い短 合），衝撃的ですらあったように思われる。 所をもあわせもつといわざるを得ない。その 後述するシェヤーやハットフィールドに対す 一一一 ≠戟C会計の基幹的かつ伝統的なイデオロギ る当時のわが国の会計学者の心酔ぶりをみれ ーとしてのaccountability（受託会計責任）の ぽ，一目瞭然たるものがある。一部にでは 観念を，かえって稀簿にしたので