腐敗が高度で死因の判定が困難であつた水死体の2鑑定例.PDFVIP

340.6: 614.81-036.88 腐 敗 が 高 度 で 死 因 の 判 定 が 困 難 で あ つ た 水 死 体 の2鑑 定 例 岡山大学医学部法医学教室(主儀:三上芳雄教授) 神 田 瑞 穂 上 村 修 奥 山 正 己 服 部 久 昭〔和36年4月26日受稿〕 表皮は剥離 している. 緒 言 上下肢 において手掌面および趾部の皮膚は白亜状 死体が高度に腐敗 して外表および内部諸臓器が軟 を呈 し半ば蝉脱状 に剥離す る.全身損傷はみ とめ ら 化,崩壊 し一部骨化 しているような場合にはその死 れない. 因の判定 は しばしば困難であ り,法医鑑定 において b)内 景検査所見の概要 難渋をきたす場合が多い.しか し水死体 あるいは川 胸部では左第IIおよびIII肋骨が胸骨の附着部にお や海な どの水辺 において発見 された死体では内部臓 いて骨折 しているが,その他の肋骨 には異常な く, 器,と くに骨および歯牙等 において植物性プ ランク 脳実質,左 右両肺および心臓 は軟化崩壊 してほとん トン珪藻類(以 下 珪「藻類」 と略記す る)の検 出を どそれ らの形態を存せず,脾臓,肝臓および腎臓 は おこなつて死因が溺死であると判定 出来 る場合があ 暗褐色を呈 し,わづかにそれ らの形態を存するが, る. いづれ も軟化,崩壊状である. われわれ は腐敗が高度で,剖 検所見のみでは死因 残存す る臓器に損傷,畸形等の異常はみ られない. の判定がまつた く不可能であつた死体(1例 は嬰児 本屍 の血液型はAB型 である. 死体)に ついて,臓器および骨 から珪藻類 の検出を c)死体臓器についての 珪「藻類」の検 出成績 行 なつて死因が溺死であると判定 しえた2鑑定例を 以上の ごとく,死体 の剖検所見ではその死因の判 経験 したので報告す る. 定 は困難であつたが,本屍 は一応河岸にちかいあさ 瀬で発見 されたいわゆる水死体 と考えられ るか ら, 事 例 形態がほぼ残存 して確認できた肝臓および腎臓 につ 事〔例1〕 いて 珪「藻類」の検 出をこころみた. 事件名:死体遺棄被疑事件 すなわち,剖検に際 して剔 出,採取 した肝臓およ 事件 の概要: び腎臓をよく蒸溜水で洗滌 し,勇細 したそれ ら臓器 昭和34年5月,岡山県下新見市内の高梁川べ りで 全量をそれぞれ清浄なキエル ダール コルベ ンに分取 遊んでいた小学生4人 が,川 中の深 さ約20cmの し発烟硝酸を約20mlく わえて ほぼ深黄褐色透明 あ さ瀬 に毛布に くるんだ嬰児死体を発見 して とどけ になるまで