大卒生採用における能力識別に関する定性的定量的考察.PDFVIP

2012-26 大卒生採用における能力識別に関する定性的・定量的考察 柳田　明子　　村上　英樹 大卒生採用における能力識別に関する定性的・定量的考察 * ** 柳田 明子 村上 英樹 * ** 東北工業株式会社 神戸大学大学院経営学研究科 要旨 本稿は,模擬企業採用試験において,学生が執筆したエントリーシートの小論文をもとに,学生が上位に採択されるための 決定要因を定量的・定性的方法で分析した実践論文である.※ 学生の小論文を採点した点数をもとに,受験者上位３割に採 択されるための重要な要因を定量的に分析したところ,企業 A が学生に求める資質である①経営学の能力,②情報活用力, 並びに③独創的・客観的表現能力は,③,①,②の順番で重要であることが判明した.さらに上位２割,１割と絞られていくにつ れて③及び①のみが大きく重視されることが判明した.一方定性的語彙分析においても,評価者が経営学の学習に関する語 彙の結びつき,並びに独創的なアイデアを客観的に述べていることを示す語彙群を高く評価していること,並びに上位に絞り 込まれるほどこの傾向が強くなることが確認され,定量的分析と定性的分析の結果の一貫性が確認された. Key Words：大学生就職,才能識別,２項ロジットモデル,語彙分析 1. 背景と目的 足説明を記入した. 本稿の先行研究である柳田・村上（2012）は，インストラク ショナルデザインのARCSモデルを用いて企業説明会を想 3. 課題と評価 定した就職採用筆記試験に関する実践事例分析を行った 3.1 課題 研究であった．i その知見の一つとして，採用に際しては, 対象１および２の学生に「今まで学んできた経営学の知 企業の中に暗黙の査証用ルールのようなものが管理職の 識でA 社の改善提案」とその理由を 400 字程度で作文の上, 間でシェアされていることが明らかとなった.その一方で,サン 講義者にメールで提出してもらった.回答期限は講義または プル数が少ないことが指摘され,結果のロバスト性に関する 資料配布後 1 週間後で.課題提出者は 22 名であった.サンプ 問題点も課題の一つとして挙げられた.今回の実践は,サン ル数はこれに前年度 M ゼミ３回生 11 名を加えた 33 名であ プル数を増や分析の精度を高めるとともに,学生が上位に る. 採択されるための決定要因を分析した. 採点者 5 名は,A 社からは工場長,係長,一般社員の職位 の違う同部門 3 名が行なった.大学側はゼミの指導教員 1 2. 講義実践内容 名,客観的立場として会計専門職 1 名にも採点を依頼した. A 社の企業説明内容は，事業内容，社史，組織， 生産 実績推移などである．本稿の先行研究である柳田・村上 3.2 課題評価方法の採点基準 （2012）との違いは,被災地の情報がなかったこと,並びに A 課題の評価方法は採点基準表１の通り３つの基準である. 社の企業活動データが半年追加されたことである. この基準の詳細については柳田・村上（2012） ⅰ を参照され 対象１