大学生の多文化共生志向に関する一考察.PDFVIP

27 大学生の多文化共生志向に関する一考察 A Study of Multicultural Symbiosis and the Intention of university students ＊ 杉原 亨 Toru SUGIHARA Abstract 国際系地方大学の学生への多文化共生志向に関する質問紙調査の分析結果を整理すると、 次の 3 つのことが明らかとなった。第一に、国籍を問わないで協働することや、海外の文 化や未知のことを学ぶこと、自分のことを伝えることに関して、全体の約 55％から 70％が 積極的であることがわかった。第二に、多文化共生志向で有意差があった項目として、外 国人の友人の有無や交流頻度、留学生と留学生ではない学生との違い、大学進学の志望度 合いであることがわかった。大学生活で日常として外国人と交流がある学生は、やはり海 外に関して親和性があり、自分の意見を主張し、新しいことにチャレンジする志向がある ことが明らかとなった。第三に、学年別や学業成績では、多文化共生志向で有意差がみら れなかったことが明らかとなった。多文化共生志向は全体的に学年進行や学業成績の優劣 によって変動がないことが確認できた。 キーワード：多文化共生（multicultural symbiosis），大学生（university student）， 国際バカロレア（International Baccalaureate），留学（study abroad）， キャリア（career） １．はじめに 近年、大学教育においても国際化が推進されており、重要視されている。筆者は国際 の学部を有する大学に勤務し、海外留学の支援や留学生の受け入れ業務、及びキャリア教 育に関する授業などを担当している。これらの業務を通じて感じることは、留学生にも様々 なタイプが存在し、学業に熱心で日本の文化を積極的に吸収する学生もいれば、目的意識 が希薄で欠席しがちな学生もいることだ。学生の状況に応じた留学生への支援がより求め られている。 一方で日本から海外への留学の動きに着目してみると、短期留学を実施している大学は 全体の約 75％であり、海外留学の数値目標を掲げている大学は 23 ％におよんでいる（朝日 ＊本学常勤職員・非常勤講師、キャリア教育 （career education）・IR （Institutional Research） 鈴鹿国際大学紀要CAMPANA No.21,2014 28 鈴鹿国際大学紀要ＣＡＭＰＡＮＡ　Ｎｏ．２１，２０１４ 新聞 2014.8.29）。一部の大学では、学生が大学入学前や入学直後に海外留学やボランティ アを体験する制度やプログラムを設けて、大学生活に対する目的意識の醸成を図っている （朝日新聞2014.9.26）。海外留学や留学生の受け入れが推進されている状況を踏まえて、 本研究では大学生への質問紙調査を通じて、大学生の多文化共生志向の実態を明らかにす る。 ２．多文化共生に関連する施策 (1)国の施策 文部科学省は 2008 年に「留学生 30 万人計画」を発表した。日本への留学生を 5 年間で 30 万人まで拡大しようとする計画で、日本への留学に関する情報公開、日本での生活面で のサポート、大学のグローバル化に伴う英語による授業・コースの拡大及び学位取得、卒