大学教育と職業訓練の学習時間に関する考察.PDFVIP

研究資料 職業能力開発研究誌，30巻，1号 2014 大学教育と職業訓練の学習時間に関する考察 － 学習時間・到達目標・指導項目数・授業方略を考慮した比較 － Consideration about the learning time of university education and vocational training 新井 吾朗（職業能力開発総合大学校） Goro Arai 近年、学修歴の相互認証を背景とする大学教育と職業訓練の接近がみられる。本稿は、職業訓練での学習、とりわけ講 義での学習を、大学教育の｢単位｣で表現する考え方を整理した。その際、学習時間だけでなく到達目標、指導項目数、授 業方略を加味して検討した。その結果、職業訓練の実施にあたって、①授業時間内で行う 45 時間の学習を 1 単位とする こと、②複数の科目を組み合わせて45 時間の倍数の授業を実施して、時間数に応じた単位で表現すること、③授業時間 内に主体的な学修に対応する時間を確保することを導出した。 キーワード：大学教育 職業訓練 学修時間 訓練時間 学習時間 主体的な学修 授業時間外 1. はじめに 下に行われなければならない12)。｣とする規程について、 法や行政組織の都合でなく、受講者の視点に立った実質 近年、大学教育の学習時間に対する関心が高まってい 的な検討の必要性を迫っている。 る。中央教育審議会答申「新たな未来を築くための大学 このような背景を受けて、本稿では大学教育と高等教 教育の質的転換に向けて」では、｢学士課程教育の質的転 育段階に対応する職業訓練の｢学習時間｣を検討の対象と 換への好循環のためには、質を伴った学修時間の実質的 する。それぞれの学習時間を、受講者が修得する能力と な増加･確保が不可欠である。｣と述べて、その具体的な 授業方略を加味して検討する。具体的には、大学教育の 方策を答申した1)。 また週刊 東洋経済は、｢特集 本当 単位を一応の基準とし、これと同等と認められうる職業 に強い大学 2012｣の中で大学改革の現状を「学修時間増」 訓練の科目が、学習時間、指導項目数、到達目標、授業 2) 方略の観点からどのようなものであるかを検討する。こ を見出しにして、答申を引用しながら紹介している 。 他方で、大学教育と職業訓練が接近している状況もあ の検討は職業訓練の大学教育化や職業訓練の実施方法の 3) 改善を迫ることを意図したものではない。現実の職業に る。職業能力開発総合大学校が行う長期課程 、総合課 程4) の修了者は学位授与機構に申請することで学士が与 対応して行っている職業訓練の仕組みを、大学教育の単 えられる5)。また中央教育審議会では、厚生労働省が職 位で表現する場合の換算の考え方を考察するものである。 業能力開発大学校・短期大学校が行う職業訓練について その目的は、職業訓練と学校教育の接続、単位互換・認 大学での単位認定の創設を求めていることが示され、そ 定、あるいは国際的な広がりをみせる職業能力の相互認 のための検討が進められている6),7)。その背景には、大学 証に必要となる学習単位の考え方を整理することにある。 生が他の教育機関で学習したことを自らの大学の単位と ところで本稿では、文献を引用する場合以外は、大学 して認定されることや、