災害時要援護者支援におけるソーシャルワーク機能に関する一考察.PDFVIP

災害時要援護者支援におけるソーシャルワーク機能に関する一考察 災害時要援護者支援におけるソーシャルワーク機能 に関する一考察 三　浦　　　修 新潟青陵大学看護福祉心理学部福祉心理学科 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 A Study of Social Work Functions in Support for Vulnerable People to Disasters Osamu Miura NIIGATA SEIRYO UNIVERSITY DEPARTMENT OF SOCIAL WELFARE AND PSYCHOLOGY キーワード 災害時要援護者、支援システム、ソーシャルワーク機能 Key words vulnerable people to disasters, support system, social work functions テムの脆弱性が解消され、必要な支援が得ら Ⅰ　はじめに れるならば自立生活が可能になる人びととい 　社会的バルネラビリティについて、古川は、 うふうに社会福祉における対象をとらえ直し 「現代社会に特徴的な社会・経済・政治・文 ていくことが重要であると考える。 化のありようにかかわって、人びとの生存 　このような考え方は、災害時を想定したと （心身の安全や安心）、健康、生活（の良さや きにも応用できる。これまで災害が発生した 質）、人格の尊厳、人と人とのつながり、環境 ときに被害が集中する傾向にある人びとは災 （の良さや質）が脅かされ、あるいはそのお 害弱者と呼ばれてきた。しかし、弱者とは、 1 ） それのある状態にある」と定義している。も 高齢者、障害者、妊産婦、外国人など実体と ともとバルネラビリティとは、心が傷つきや して対象をとらえた定義であり、この定義の すい、病気になりやすい、被災しやすい、犯 仕方では、どのような対策・支援が必要なの 罪被害を受けやすいなど、脆弱性を意味する か不明瞭であるとの指摘を受け、より具体的 言葉であるが、これを社会構造的な概念とし な対策・支援を促進させるために、“災害時” て再構成されたのが社会的バルネラビリティ に“援護”が必要となる人びと、つまり、「災 である。この概念は、社会福祉の対象をとら 害時においても必要な援護が得られれば自立 えていく際の新しい枠組みとして援用されて 的な生活を送ることができる人びと」という いる。すなわち、社会福祉における自立支援 観点から『災害時要援護者』という用語が定 2 ） との関連で考えるならば、社会の構造や機 着してきてい る。社会福祉の視点からとらえ 能・システムの脆弱な部分が人びとの生活に ると、“必要なときに、必要な援護が得られれ 加わることによって、ウェルビーイング（安 ば”という仮定条件に着目することが重要で 寧）が脅かされることになり、自立生活の破 ある。すなわち、災害時を想定した社会福祉 綻をもたらす重大な要因になると指摘でき における自立支援は、社会的施策や制度など る。逆説的にいえば、社