中間試験問題-SophiaUniversityPrivateHomePage.docVIP

２００８年度　物権法　学期末試験──問題 　Ｘは所有する土地をＡに売却して登記を移転したが、Ａが代金を支払わなかったので、Ａとの売買契約を解除した。ところが、その後にＡは土地をＹに転売し、登記をＹに移転した。この場合について、次の問題を考えよ。 （１）ＸＹ間の関係について、判例は対抗要件アプローチをとっている。その内容を説明するとともに、「判例がＸについて対抗要件を要求する理由」を説明せよ。 （２）判例理論の問題点を説明せよ。 （３）学説では公信力アプローチが有力である。その内容を説明せよ。 （４）上記とは設例を変えて、ＸがＡとの契約を解除する前に、ＡＹ間の契約が締結されていたとする。そして、Ｙは契約を締結しただけで、登記はＡの下に残ったままだった。この場合に、ＸＹ間の法律関係はどうなるか。 ２００７年度　物権法　学期末試験──問題と解説 第１問 　2007年1月、Ａは所有する土地をＹに賃貸し、Ｙは月10万円の賃料を毎月1日に支払うことを約した。Ｙはその土地に建物を建て、建物の保存登記を経由したが、同年4月末日にＡは土地所有権をＸに売却し、6月末日に登記をＸに移転した。ＸはＹに対して土地の明渡しと5月分以降の賃料相当損害金の支払いを求めている。 　この場合におけるＸＹ間の法律関係を説明せよ。 第２問 　借金返済に苦しんでいたＡ社は、ピカソの名画を所有していたので、それを売却して借金の返済に充てようと考えた。ちょうど、Ｘ美術館がＡに10億円での購入を申し込んできたので、Ｘに売却して代金を受領した。但し、絵画はＡ所有の倉庫に保管していたので、売却した絵画を一旦はＡが預かる形とし、10日後に取りに来るよう申し入れたところ、Ｘはそれを了承した。ところが、その1週間後、来日した外国人美術商Ｙが13億円での購入をＡに申し入れてきたので、ＡはＹとも売買契約を結び、すでに絵画を手元に取り寄せていたことから、Ｙは直ちに絵画を受領した。その後、それを知ったＸがＹに対して絵画の返還を求めたところ、事情を知らなかったＹは驚いたものの、Ｘの請求を拒んでいる。 この場合におけるＸＹ間の法律関係を説明せよ。 解説 第１問 1 賃借権の物権化：その制度趣旨（不動産賃借人の保護、賃借人単独での対抗要件具備）、具体的な要件論（建物保存登記と土地所有権登記の先後） 2 賃料請求：具体的な要件論（権利保護資格要件としての登記）、その理由（画一的処理）、当てはめ（登記後の７月分以降のみ請求可） 第２問 1 動産の対抗要件 2 即時取得制度：具体的な要件論（有効な取引、平穏公然、善意無過失、占有取得）、制度趣旨（占有が公示手段として確実さにかけることに鑑みた動的取引安全） ２００３年度　物権法　学期末試験──問題と解説など 設例 　Ａは自宅の土地建物をＢに売却して（６月１日）、６月１０日、代金４０００万円と引換に占有改定の方法で引き渡した。ところが、６月末にＣが５０００万円を出すと言ってきたために、ＡはＣと売買契約を締結し（７月１日）、同日、登記をＣに移転した。 問１　上記の設例で、ＡＢＣの法律関係を論じたうえで、物権と債権の違いを示せ。 問２　上記の設例で、ＡＢ間の契約が売買ではなく土地建物の賃貸借（賃料１０万）で、Ｂが現実の引渡を受けていたとすれば、どうなるか。その他の事実関係は設例と同じだとしたうえで、問１との差異を中心に論ぜよ。 問３　上記の設例で、商品が土地建物ではなく、建設用鋼材の二重売買だったらどうなるか。問１との差異を中心に論ぜよ。但し、ＡがＣに移転したのは登記ではなく、占有だとする。 採点基準（要旨） Ａ　問１～問３を完答した場合。 Ｂ　問１?問２は完答したが、問３の説明が不十分な場合。 Ｃ　問１?問２を完答した場合。 Ｄ　問１を完答した場合。 採点基準 Ａ　問１（対抗要件?物権と債権の違い）?問２（対抗要件?権利保護資格要件）?問３（即時取得制度の要件と制度趣旨）を完答した場合。 Ｂ　問１?問２を完答し、問３について相当程度の説明はあるが不十分な場合。 Ｃ　問１?問２を完答した場合。 Ｄ　問１を完答した場合。 解説 　ごく単純な二重譲渡の問題であり、対抗要件や即時取得の理解を問うている。 問１ 　物権変動があれば、当事者間では契約により所有権は直ちに移転するが（§176）、物権変動を第三者に主張するには対抗要件が必要である。不動産の対抗要件は登記であり（§177）、本問ではＢＣのうち先に登記を取得したＣが所有者となる。 　この場合、Ｂは所有権を取得できないが、売買契約に基づいてＡの債務不履行責任を追及して契約を解除できるほか（§543）損害賠償を請求できる（§415後段）。もっとも、Ｂの損害賠償請求権は債権にすぎず、債務者Ａが無資力であれば