SpaceDebris.doc

Communication Satellite and Broadcasting Satellite 【和訳】通信衛星と放送衛星 【解説】 　（１）通信衛星 　電話などの音声信号、テレビジョン信号などの映像信号、FAX、コンピュータ?データなどのディジタル情報等を長距離無線伝送するために中継媒体として用いる人工衛星をいいます。 　衛星通信は、地球周回衛星による実験から開始されました。最初の通信衛星は、1960年8月12日に周回軌道に打ち上げられた米国のエコー１号による受動型（衛星に電波を反射させ送り返すもの）のものでした。最初の太平洋横断テレビ衛星中継実験は、リレー１号を使って1963年11月23日に行われ、送られてきた映像が米国ケネディ大統領の暗殺のニュースであったというのは衝撃的でした。静止衛星による衛星通信は、SF?2001年宇宙の旅?の作者として有名なArthur C. Clarke が赤道上空約3,6000 km の円軌道が静止軌道であり、全世界通信に利用できることを、1945年10月、英国の雑誌”Wireless World ”に発表したのが最初でした。それから19年後の1964年8月19日、NASA (National Aeronautics and Space Administration: 米国航空宇宙局)のSyncom-III 衛星が太平洋上空の静止軌道に打ち上げられて、世界で最初の静止衛星となり、東京オリンピック(10/10～10/24)を全世界に中継しました。Syncom-III　衛星の成果は、国際衛星通信機関である国際電気通信衛星機構(INTELSAT: International Telecommunications Satellite Orgtanization) の設立へと向かい、衛星通信は宇宙商業化の端緒を開きました。衛星通信は、現在でも最も宇宙商業化が成功している分野です。世界の今後１０年間の通信衛星の市場は、1～5兆円/年と見込まれています。このため、世界中からここ１０年間に２００機近い静止衛星が打ち上げられると予測されています。 　通信衛星には、地球の自転と同じ周期の静止衛星軌道を利用する静止通信衛星、移動体衛星通信システムに適した周回軌道通信衛星および旧ソ連が多く運用している高緯度地方での通信を考慮した長楕円軌道通信衛星があります。静止軌道はGEOと呼ぶことも多いです。現在実用になっている通信衛星、放送衛星の殆どはGEOを利用する静止衛星です。GEOは、地上から衛星までの距離は約36,000 kmであり、電波の伝搬時間は往復で約1/4秒かかり、電波伝搬による信号強度の減衰は距離の二乗に比例するので、移動体通信、特に携帯型端末で移動体衛星通信を行うにはできるだけ衛星までの距離が短いことが望ましいです。そこで、もっと低い高度の軌道が有効となり、最近では高度500～数千km（多くは1500 km 以下）の軌道を利用するシステムが提案されています。この様な軌道をLEO(Low Earth Orbit)と呼びます。旧ソ連が多く運用している高緯度地方での通信を考慮した長楕円軌道通信衛星は、モルニア軌道とよばれるもので、離心率が0.5付近、軌道傾斜角が63°付近、遠地点における高度が約40,000ｋｍです。緯度の高いヨーロッパの国では静止衛星の場合、仰角が低くなり、（東京からは、仰角40°前後です）移動体通信の場合は、建物などにより電波の進路が妨げられて通信が不能となるため、モルニア軌道が提案されました。モルニア軌道は周期が１２時間ですが、周期が２４時間のツンドラ軌道も考案されており、これらを総称して長楕円軌道(HEO: Highly Elliptical Orbit)と呼びます。 　初期の通信衛星には、Cバンド(上り回線6GHz/下り回線 4 GHz)のマイクロ波中継器(トランスポンダ)を搭載した衛星が殆どでしたが、衛星の大型化、衛星数の増大から利用周波数も広がり、Ku帯（14/11 GHz）更には、わが国が進めた先端的な技術開発によってKa帯(30/20 GHz)も利用されています。最近では、衛星間通信にミリ波や光が利用されています。 （２）放送衛星 　放送衛星とは、一般家庭で放送を小型の簡易な受信システム（アンテナ、受信機）で直接受信することを目的とする人工衛星です。受信形態は、各家庭での個別受信方式と共同受信方式があります。放送衛星は、簡易な地上受信システムで受信するために、衛星側の送信電力が大きいことから、他国へのスピルオーバー、周波数、電力束密度等について、無線通信規則で規定されています。スピルオーバーとは、放送衛星から発射される電波がサービス