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がん対策の推進に関する意見 日本臨床腫瘍学会理事?国立がんセンター中央病院13A 病棟医長 大江裕一郎 １．がん治療の専門医、特に腫瘍内科医、緩和ケア専門医、放射線治療専門医の育成 A. わが国のがん診療の現状 表に日米の医師数?専門医数の 比較をしてしたが、人口比を考え ると、医師数、内科医数、血液内 科医数は日米で大きな違いはな い。しかし、米国には１万人を越え る腫瘍内科医がおり、米国並みに 総てのがん薬物療法を「がん薬物 療法専門医」が実施する体制を我 が国で構築するには、少なくとも 3000 名程度のがん薬物療法専門 医が必要となる。 がん診療の実態を把握するために、厚生労働科学研究費補助金がん臨床研究事業「効果的かつ効率的な がん専門医の育成方法に関する研究」班（主任研究者：大江裕一郎）で、わが国のがん診療の中心である大学 病院（分院を含む）、がん専門病院および地域がん診療拠点病院におけるがん専門医のアンケート調査を平成 17 年７月に実施した。大学病院、全国がん（成人病）センター協議会加盟病院および地域がん診療拠点病院 262 施設の施設長にアンケートを送付し 157 施設 （59.9%）より回答を得た。 主にがん患者の化学療法などの内科的治療のみを実施している、いわゆる腫瘍内科医（血液内科医を含む）は 合計 876 名おり各施設の平均は 5.7 名 (0-66 名)であった。しかし、70 施設(44.6%)では、1 名も腫瘍内科医が勤 務していなかった。現在、主に化学療法を内科医が実施している施設は 12 施設(7.6%)のみで、大多数の施設で は外科医も化学療法を担当していた。しかし、将来的には腫瘍内科医もしくは薬物療法の専門医が化学療法を 実施すべきであると考える施設が多数を占めていた。 緩和ケアを専門とする医師は、64 施設(40.8%)で 1 名も勤務しておらず、21 施設(13.4%)では１名しか勤務してい なかった。 放射線治療を専門とする医師は合計で 341 名であったが、全く勤務していない施設が 24 (15.3%)、1 名しか勤務 していない施設が 58 (36.9%)であった。 B. 専門医によるがん診療の利点 現在は、腫瘍内科医が不足しているために抗がん剤治療は外科医も実施せざるを得ない状況となっているこ とが、アンケート調査の結果からも明らかである。理想としては、「１年間に50人の手術と50人の抗がん剤治療を する医師 100 人」という現状を、手術を専門とする腫瘍外科専門医（１年間に 100 人の手術をする医師 50 人）と 薬物療法を専門とするがん薬物療法専門医（１年間に100人の抗がん剤治療をする医師50人）に分けるのが効 1 率的である。これによって、腫瘍外科専門医 1 人当たりの手術件数は増加し、がん薬物療法専門医 1 人当たり の化学療法の件数も増加する。医師 1 人当たりの症例数増加は、治療成績向上に繋がると考えられる。 C. 専門医不足の原因と対策 欧米に比較してわが国で、がん専門医、特に腫瘍内科医が不足している理由として、わが国では大学で臨床 腫瘍学を系統的に教育する講座が