近年、動脈硬化性疾患の増加に伴い、整形外科を受診する患者に、uest.pdfVIP

この論文は、「Arterial Stiffness」WEBサイトに掲載されています。その他の論文はこちら Click Arterial Stiffness web site for more articles. QA 近年、動脈硬化性疾患の増加に伴い、整形外科を受診する患者に、 Question 2 末梢動脈疾患（PAD）と腰部脊柱管狭窄症（LCS）を合併する患者が 増えてきました。ABIを用いた両者の鑑別方法を教えてください。 Answer 松山幸弘（浜松医科大学整形外科学） 　同じ症状の間欠跛行ですが、PAD患者は動脈硬化性疾 腰部脊柱管狭窄症とPAD合併の鑑別 患のために、冠動脈や脳動脈疾患の合併症も多く予後も 　われわれの脊椎外来で最も多い疾患の一つが間欠跛行 悪くなります。201例に対し、触診など通常の診断方法に を呈する腰部脊柱管狭窄症（lumbar spinal canal stenosis； 加え、足関節/上腕血圧比（ankle brachial pressure index； LCS）です。足に痛みがある、しびれるといった自覚症状 ABI）が0.9以下、あるいは足趾/上腕血圧比（toe brachial がある場合は、整形外科を受診することが最も多いのが pressure index；TBI）が0.6以下をPADと診断し、PAD 現状です。その間欠跛行の原因疾患にはLCSと末梢動脈 の合併割合を検討してみました。その結果、ABI低下例9 疾患（peripheral arterial disease；PAD）が主にあげられ 例、TBI低下例47例であり、PADを合併していた症例が ますが、近年、動脈硬化性疾患の増加に伴い、LCSに血 52例（26％）にも及びました（図 1）。また、PADを合併し 管性であるPADを合併した間欠跛行の患者も増えてきま ている患者は、下肢冷感を感じることが多く、血液検査 した。したがって、この両者を鑑別し、適切な治療が施さ としては高脂血症が有意に多く認められました。 れることが望まれています。 　鑑別に大切な足背動脈と後脛骨動脈拍動も調べてみま したが、足背動脈の感度、特異度は68％と70％、後脛骨 間欠跛行の原因疾患と 動脈の感度、特異度は60％と64％でした。この動脈測定 LCS、PADの合併の鑑別 では見逃しが多くなる可能性があり、PADのスクリーニン 　間欠跛行は、歩行によって下肢のしびれ、痛みを訴え グとしてはいささか不十分といえます。したがって、腰 ますが、休息によって寛解する症候のことをいいます。 部脊柱管狭窄症の患者でも、既往に糖尿病、高血圧、高 われわれはその原因疾患であるLCSを主に診察していま 脂血症があったり、また下肢の冷感が強い場合には、積 す。しかし、同様の症状を呈する疾患として血管性疾患 極的にABI、TBIを測定したほうがよいと思われます。 であるPADがあり、年齢的にも同様に60歳代以上に発症 　このようにLCSの患者のなかにはPADを合併している することから、PADの合併が見逃されている可能性が指 方も多く、整形外科医としては常にPADの存在を認識し 摘されるようになりました。 てLCSを診る必要があると思われます。 図1 ● 201例の調査結果