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現代社会における家族の機能変動と家族関係 現代社会における家族の機能変動と家族関係 平 野 敏 政 1）はじめに 「2001年宇宙の旅」という映画で、監督である S.キューブリックは約 7 分に及ぶ“Dawn of Man First Step in Evolution”と題したプロローグをタイ トルクレジットの前においている。このプロローグにおいてキューブリッ クは、R.シュトラウスの交響詩「ツァラツーストラはかく語りき」を BGM にして、洞窟に集っている類人猿、そこには母親と子供そして男たちが家 族、群れをなして生活している様子を描いている。類人猿はやがてこの映 画の主題となっているある物体との接触から知恵を獲得し、大きな動物の 骨を道具として使用することを学び、獲物を取ることを身につけると同時 にその道具を武器として利用し他の類人猿との戦いに勝利する。 勝ち誇った類人猿はその道具＝武器を、雄叫びをあげながら空高く投げ 上げる。するとその骨は遥かな宇宙空間に浮かぶ巨大な葉巻型の宇宙船に 代わり、その宇宙船はこれまた巨大な二重構造のドーナツ型の宇宙基地へ と音も なく進んでいく。ドーナツ型の宇宙基地は漆黒 の宇宙を背景 に、J. シュトラウスの「美 しき青 きドナウ」のメロディーに合 わせて優雅 にゆっ くりと回転 している、という大変美 しい印象的なシーンを描いている。 この 7 分間のプロローグでキューブリックは、類人猿が空高く投げ上げ た骨が一瞬 にして巨大な葉巻型の宇宙船に代わるというモ ンタージュに よって、数百万年におよぶ人類の知恵、技術 （道具）、武器の進歩 を一挙 に 表現してしまったのである。人類の「夜明 け」に或 るもの（実はモノリス と名付 けられた宇宙からの物質あるいは神）との接触によって知恵と道具 − 1 − を獲得する場面 に R.シュトラウスの交響詩「ツァラツーストラはかく語り き」、そして投げ上げられた骨が巨大な葉巻型の宇宙船に代わり、ドーナツ 型の宇宙基地とドッキングし、宇宙基地が漆黒の闇を背景 にゆっくりと回 転 し続 けるシーンでは J.シュトラウスの「美 しき青 きドナウ」という対照 的な楽曲 を巧み に組み合 わせて BGM として使用し、人類の進化を象徴的 に表現する手腕 はまことに見事 という他ない。 キューブリックが描いたように、道具は人類にとってその歴史のは じめ から生存 にとって不可欠の ものであったといえるが、もう一つ人類の歴史 とともに古 く、人類の生存 にとって不可欠の ものがある。 じつはキューブ リックは前述の雄叫びの場で鬨の声 を挙 げる類人猿を描く前に、冒頭に記 述 したように洞窟で生活する母親と子供を含む家族、群れの生活を描いて いたのである。 すでに了解できることと思 うが、キューブリックはこのプロローグで人 類の進化と生存 にとって二つのものが不可欠であったと言 っているのだ。 一つが道具（武器）であり、他の一つが家族である。 「2001 年宇宙の旅」のプロローグに表現 された道具（武器）と家族が人類 の進化と発展 に不可欠 とするキューブリックの考え はある意味ではあまり にも単純な仮説 ともいえよう。しかし、ではこの仮説 を全 く証明の困難な 非科学的仮説 として一蹴することができるかとい えばそうではないだろ う。 家族と道具（武器）はそれ ほどにわれわれの生活と生存 にとって今 日に おいて さえも重要な役割 を担 っていると思われるのだ。 現代社会に暮 らすわれわれにとっても、われわれは家族の中で生まれ、 家族の 中で養育され、教育さ れ、家族の中で 自分 自身とは何者かという確 信 を得、自らが何 をなすべ きか、自らが何 になるべ きかという問いかけに 答え、生きている。われわれにとっては、われわれの存在 に先だ って家族 が存在 し、われわれが何者 であるかの第一義的確信 は家族によってもたら されているといって も過言ではない。 このように家族はわれわれ自身とわれわれの生活その ものとを第一義的