経営環境の変化と人事制度の変遷 K 代表取締役 小塚 真弥.PDFVIP

「人事制度の昨日・今日・明日を考える」 第２回 「経営環境の変化と人事制度の変遷」 小塚社労士事務所 株式会社オフィスK 代表取締役 小塚 真弥 「人事制度の昨日・今日・明日を考える」 やがて、１９５０年代半ばから始まった 第２回目は、「昨日」の部分に着目して、戦 日本経済の高度成長を背景として、大企業 後から現在まで、日本における人事制度が、 を中心に日本型雇用システムの三種の神器 経営環境の変化に応じてどのように変遷し （年功序列型賃金、終身雇用制、企業内組 ていったかについて振り返ってみます。も 合）がこの時期に確立されていくことにな ちろん、全ての企業の人事制度がこの流れ ります。企業の労務構成がピラミッド型で、 に沿って改定されていったわけではありま かつその組織自体が成長期にあったこと、 せんし、同じ流れであっても企業規模や業 そして、ビジネスモデルの手本があり、技 種・業態によってタイムラグがあることは 術の変化が比較的緩やかであったこの時代 事実ですが、各企業における人事政策や諸 には、年功型の賃金体系、ポストによる長 制度が、その時々の人事制度の潮流という 期決済型処遇、長期安定雇用による熟練労 ものに多少なりとも影響を受けているとい 働者の育成等は、まさにベストマッチシス うことは明らかであろうかと思います。 テムとして機能していたともいえます。 会社側にとってみれば、いたってシンプ 〔生活給重視の年功主義〕戦後～1960 年頃 ルで運用しやすい制度であり、また働く側 戦後の混乱期、雇用の著しい減少と激し にとっても、「何歳で勤続何年の社員の賃金 いインフレーションの最中にあったこの時 はいくらになる」という見通しの立つ賃金 期は、何よりも生活の安定を図ることが労 体系と役職ポスト付与による処遇は、当時 使の共通認識でした。そんな中、当時の日 においては納得感の高いものでありました。 本電気産業労働組合協議会から出された要 求を受け入れる形で誕生したものが「電産 〔職能主義の時代〕1975～1990 年頃 型賃金体系」と呼ばれる賃金体系でした。 １９７３年に始まったオイルショックは、 これは基準賃金の約７０％が年齢と扶養家 日本経済の大きな変換点となりました。経 族数に基づく生活保障給という性格の強い 済成長が鈍化し、技術革新が進み、また社 もので、後の年功型賃金の原型となってい 内の労務構成の高齢化が進んでいくと、年 きました。 齢や勤続を中心とした年功型賃金体系は修 また、この時期は GHQ より職務分析・ 正せざるを得なくなりました。また、高度 職務評価の技法が紹介され、アメリカをモ 成長期のような組織拡大が困難になり、各 デルとした職務主義の試みがなされました 企業でポスト不足といった状況が顕著にな が、日本の職場慣行や職務を特定すること ってきました。 の硬直性等によりあまり定着はしませんで このような状況下で誕生したものが「職 した。 能資格制度」でした。これは、年齢や勤続 に代わり、各人の職務遂行において必要と 〔年功主義の完成〕1960～1975 年頃 される能力のレベル（職務遂行能力）に着