医療ビッグデータ活用による 製薬企業の営業改革.PDF

特集 新興国におけるヘルスケア市場の展望と日本企業の事業機会 医療ビッグデータ活用による 製薬企業の営業改革 小久保欣哉 CONTENTS Ⅰ　営業活動を取り巻く環境変化 Ⅱ　進むIT化──ITツールと医療情報データベースの進展 Ⅲ　医療情報を活用した薬剤処方獲得の影響要因分析 Ⅳ　営業アクションにおける多様なデータ活用──想定される営業アクション 要約 1 近年、MR（Medical Representative ：医療情報提供者）の活動を取り巻く環 境が厳しさを増している。医療機関への訪問規制が浸透し、アポイントメント を必要とするケースが増えている。また、2012年４月からの医薬品公取協の公 正競争規約（「医療用医薬品販売業における景品類の提供の制限に関する公正 競争規約」）の運用基準見直しにより、接待関連行為の制限も進んでいる。 2 一方、製薬企業の営業活動の質的な面を効率化させる追い風として、IT（情 報技術）ツールと医療情報データベースの活用が考えられる。特に電子カルテ 等の医療情報データベースは、疫学研究によるエビデンス （臨床試験結果に基 づく学術論文等）づくりや疾患の実態把握のためのマーケティングなど、多様 な用途での活用が期待される。 3 医療情報を活用した営業施策の全体俯瞰には、薬剤処方獲得の影響要因の分析 が推奨される。当該分析モデルでは、患者数および薬剤処方率を実際のカルテ データを用い、アンケートによる評価データとリンクさせて分析する。ここで の新規性は、電子カルテ等が蓄積された医療ビッグデータの二次活用である。 4 薬剤処方獲得の影響要因の分析結果を、①製品力（有効性・安全性、価格・経 済性）を示すエビデンスの構築、②MR活動（量・質）、③コングレス活動 （KOL投資等）──に活用するという営業アクションが想定される。今後、医 療ビッグデータ活用による便益をさらに享受するには、新たな用途開拓を模索 していく必要がある。 44 知的資産創造／2012年 8 月号 当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法および国際条約により保護されています。 CopyrightⒸ2012 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. Ⅰ 営業活動を取り巻く環境変化 １月に策定したことや、業界が新薬創出加算 の恒久化実現を要望していることも背景にあ 1 進むMR活動の規制 る注2。 近年、MR（Medical Representative：医療 逆境ともいえる このような状況のなか、 情報提供者）の活動を取り巻く環境が厳しく MR活動のあり方を考える際には、訪問先で なってきている。 ある医師の声に耳を傾けることが重要なのは 具体的には、MRに対する医療機関への訪 もちろんだが、製薬企業には、従来のアプロ 問規制の浸透である。これにより、訪問にア ーチや活動方法の根本的な見直しが迫られる ポイントメントを必要とするケースが増えて 可能性も少なくない。 おり、医師との面談機会は減少し、それに伴 い情報提供のためのディテール活動の機会確 2 MR資源のアウトソーシング化 保も難しくなっている。 ディ