河川堤防の越水破堤機構に関する研究.PDFVIP

河川堤防の越水破堤機構に関する研究 河川堤防の越水破堤機構に関する研究 研究予算：運営費交付金（一般勘定） 研究期間：平 20～平23 担当チーム：寒地河川チーム、寒地技術推進室 研究担当者：柿沼孝治、島田友典、大串弘哉、村上泰啓 稲垣達弘、石谷隆始、市原哲也 【要旨】 越水破堤に関する研究は様々な手法で進められているが，実スケールでの 3 次元越水破堤メカニズムは明らか になっていない．千代田実験水路において実スケールでの氾濫域を含む3 次元越水破堤実験を行った．これより 次のことが明らかとなった．越水から破堤拡幅が始まるまでは既往の正面越流による破堤実験の知見を流用する ことが可能である．破堤拡幅が始まった後、破堤幅拡幅量・破堤拡幅速度は河道内の単位幅流量を用いることで 推定できる可能性があると言える． キーワード：越水破堤，破堤拡幅過程，千代田実験水路 1．はじめに 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第 4 次評 価報告書によると，気候システムの温暖化には疑う 余地がないとされており 1)，将来の降水量増加に伴 い現計画が目標とする治水安全度は著しく低下し， 浸水・氾濫の危険性が増えることが想定されている 2) ．なかでも堤防決壊による被害は甚大であり，過 去の事例ではその 8 割以上が越水に起因するもので あるとされている 3)．近年では治水対策案の一つと して，決壊しない堤防・決壊しづらい堤防も挙げら れてはいるが 4)，現状では技術的に困難であると言 図-1 千代田実験水路における実験の様子 われている 5) ．越水破堤に関する研究は様々な観 濫域まで考慮した実験を行い，破堤拡幅過程を明ら 点・手法で進められており，島田らはそれらを体系 かにするため,実験区間を可能な限り長くし, より実 的に整理している 6)．越水破堤現象は実災害を時系 現象に近い条件下で実験を行った.また,本実験結果 列で観測した事例がなく，特には実スケールでの 3 を用いて破堤拡幅過程の検討を行うため,河道内流 次元越水破堤メカニズムについて未解明な部分が多 況,堤体土質,堤体形状を変更し,全 4 回の実験を実施 い．よってこれらを時系列で現象把握・データ蓄積 した． が出来れば今後の研究発展にとっても非常に重要で 本論文では実験結果を整理し，越水から破堤拡幅 あると言える．またこれらが明らかになることで， 進行過程を明らかにした．また蓄積されている既往 破堤後における堤防復旧等の危機管理対策技術の向 の知見がどこまで実現象に適用可能か検討を行った． 上，ハザードマップの精度向上など，その成果を行 最後に破堤拡幅速度に寄与する因子について検討を 政へ還元することも期待できる． 行った． 国土交通省北海道開発局と(独)土木研究所寒地土 木研究所では 2008 年度から十勝川千代田実験水路 2．越水破堤実験の概要 7)(以下，千代田実験水路)において実スケールでの越 2．1 実験水路形状概要 水破堤実験を行ってきている 6) 8) 9)．図-1 に示すよう 実験水路の形状を図-2 に示す．千代田実験水路は に，千代田実験水路において河道流有・横越流・氾 融雪時期に常時，通水可能な流量が 75m/s 程度であ 濫域まで考慮した実験を行い，破堤拡幅過程を明ら ることから必要な水深を確保するため，河道は鋼矢 - 1 -