力学12章末.PDFVIP

12 章 1. 図のように、板バネのついた質量m1 の台車と質量 m2 の台車を押し付け両者を糸で結ぶ。 糸を切ると台車 1, 2 はそれぞれ速さv , v で反対方向に走り出した。v , v の比を求めよ。 1 2 1 2 台車に加わる外力については、鉛直方向には重力とレールからの抗力が打ち消しあい、水 平方向は摩擦力を無視する。したがって、２つの台車からなる系に対する外力の総和は 0 である。さらに台車を質点とするモデルを考える。水平方向の運動だけを考えれば十分であ る。この系にとって板バネがおよぼす力は内力であり（それが保存力であるか否かにかかわ らず、作用反作用の法則を満たすことだけから導かれる結論として）系の全運動量の変化に 寄与しない。外力の総和が 0だから系の全運動量が保存する。 図の水平軸の正方向を左向きにとると、台車１の運動量はm v 、台車２の運動量は−m v 1 1 2 2 である。したがって全運動量はm v −m v である。初期状態では２つの台車が静止してい 1 1 2 2 る（全運動量が 0）。だから、台車が走り出しても全運動量は 0に保たれる。すなわち常に m v −m v 0 1 1 2 2 が成り立つ。これより v m 1 2 v m 2 1 となる。もし台車１が２の 10倍の質量を持つなら、速さは 1/10になる。もし台車１にくら べて２の質量が無視できるほど小さければ（台車１は「壁」「大地」である）、１は動かな いで２だけ動く。 2. 長さL の糸に質量M の木片がつるしてある。それに質量 m、速度 v の弾丸を水平方向か ら撃ち込んだところ、弾は木片中で止まった。弾が木片中を進む時間は無視できるとして、 以下の問いに答えよ。 １）木片が動き出す速さを求めよ。 ２）衝突の直前直後で、木片＋弾の系の力学的エネルギーはどれだけ変わったか。 ３）木片は最高どれだけの高くなるか。 ① 弾丸と木片からなる系に注目する。 衝突前 ② 衝突前には、弾丸には重力が、木片には重力と糸の張力が外力 として加わる。 ③ 「弾が木片中を進む時間」を「衝突中」と呼ぶと、「衝突中」 衝突中 の時間は無視できるほど短いので、糸の張力と重力の力積（力 ×時間）は無視されるが、弾丸と木片の間の摩擦力は非常に大 きいためその力積は無視できない。また、木片の運動量の変化 衝突後 は有限の大きさだから速度の変化も有限であり、時間が無限に 小さいので、衝突中の変位（速度×時間）は無視できる。言い 12 章 換えると、衝突は一瞬の出来事なので、その間に木片は移動しないで速度だけが変わる。 ④ 衝突後には、弾丸と木片が一体となった系に、重力と糸の張力が外力として加わる。 １）「衝突中」の出来事だけに注目する。弾丸が止るまでの非常に短い時間では「弾丸と木 片からなる系に作用する外力」すなわち重力と糸の張力は、それらの力積が 0だから系の運 動量の変化を引き起こさず、衝突中の系の運動に対する影響は無視できる。そうすると、こ の系では（弾丸と木片の間の摩擦力である）内力だけ作用していることになり、摩擦力は作 用反作用の法則を満たしているので、「衝突中」には全運動量が変化しない。同じことだが、 衝突直前と直後で弾＋木片の系の全運動量は保存する。 「衝突中」が始まるとき（弾丸の運動量は mv 、木片は静止