担持贵金属触媒の低温(180 K)からの升温还元法.pdf

筑波大学技術報告 29:20-23,2009 担持貴金属触媒の低温（180 K）からの昇温還元法（TPR） 伊藤 伸一 筑波大学数理物質科学等技術室（物性・分子工学専攻） 〒305-8573 茨城県つくば市天王台 1-1-1 定原理は次の通りである。アルゴンベースの 5%水 概要 素ガスを用いる。分岐したガスの一方は、フローコ 貴金属微粒子をシリカ（SiO ）やアルミナ（Al O ） ントローラー 1 で流量制御（一般的には 30 mL/min 2 2 3 などに担持した担持貴金属触媒のキャラクタリゼー 程度）したのち反応器に導入し、TCD ガスクロマト ションのひとつである昇温還元法について検討した。 グラフのカラム 1 に導入する。もう一方のガスはフ 小型の電気炉を作成し、これを液体窒素で 180 K ローコントローラー 2 で流量制御し、ガスクロマト （-93℃）まで冷却してから昇温を開始した（冷却電 グラフのカラム 2 に導入する。これらの2 系統のガ 気炉法）。その結果、直線性のよい昇温プロファイ ス流量は同じに設定する。カラムの充填剤にはモレ ルが得られた。 キュラシーブを用いると、触媒の還元により生成し た水を吸着するので都合がよい。また、カラムの直 キーワード ：昇温還元法、Temperature-programmed 前にトラップを入れて水を除去してもよい。電気炉 reduction (TPR)、担持貴金属触媒、冷却電気炉法 を一定の速度で昇温すると、触媒の還元が起こり水 素を消費する。ガスクロマトグラフの検出器 1 に導 １．はじめに 入されるガス組成が変化することで、記録計に還元 の様子が記録される。すなわち、還元挙動がわかる。 担持貴金属触媒のキャラクタリゼーションのひと 前述のように、低温からの TPR を行うため電気炉を つに昇温還元法（Temperature-programmed reduction: 直接液体窒素で冷却する方法を検討した。市販の電 TPR）がある[1]。これは、アルゴンなどの不活性ガ 気炉では無理があるので、今回新たに製作した。そ スで希釈した水素ガスを一定流量触媒に流通させな の方法について次節で述べる。 がら一定の速度で温度を上げていき、触媒の還元特 性を調べる方法である。酸化物担体に担持した貴金 5.0% H / Ar (0.2 MPa) 属微粒子（白金（Pt）やパラジウム（Pd））は、室 2 温付近から還元が始まるので、室温で水素を流通さ せただけで還元が起こることが考えられ、より正確 な還元特性を知るためには、より低温から行う必要 がある。反応管内に固定した触媒を室温以下に冷却 Flow controller 1 Flow controller 2 するには、反応管そのものをアセトンシャーベット （-94℃：179 K）などであらかじめ冷却しておかな ければならない。しかし、こ