第9话堆积岩と堆积环境.PDF

一 般 地 質 学 （大藤） – 53 – 第 ９ 話 堆 積 岩 と 堆 積 環 境 堆積環境については第7 話で簡単に触れたが，ここでは て岩石が地面に露出した岩石砂漠も多い．また，もともと その補足的説明を行う． 礫を含む地層が分布していた砂漠では，風によって砂粒が 運搬され，粗い礫が砂漠敷石 （desert pavement）として砂 風による侵食 ・運搬 ・堆積 漠の表面に残される．砂漠の表面が砂漠敷石で敷き詰めら 台風で風速が20 m ／秒を超えると，人間は真っ直ぐ歩 れると，砂粒の更なる侵食 ・運搬が押さえられる． きづらくなり，屋根瓦や看板が吹き飛ばされるようになる 砂漠では，風により砂が運び去られる侵食作用 （defla- （マストランスポート！）．風には，それだけの潜在力があ tion）の他に，風が運ぶ砂粒が露岩にぶつかって起こる磨 る．もちろん，空気の密度や粘性は水の密度や粘性より遙 食作用 （wind corrasion）も重要である．一方向の風が卓越 かに小さいため，風と水が同じ速度で流れる場合，水の方 する砂漠では，露岩や礫が風上側の面に沿って磨食されて がより大きな岩や粒子を運べる．それでも世界では，秒速 風稜石 （ventifact）ができる （第9.1 図）． 80 m （300 km/hr）を超える極端な突風も記録されている． 多量の砂が集積した砂漠には，様々な種類の砂丘 （sand そういう突風は，直径数cm の石ころを1 m 強持ち上げ， dune）が発達する．風向に平行な鉛直断面で見ると，一般 建物の中や木の枝の上に運ぶこともある．しかし，風速50 に，砂丘の風上側斜面が緩傾斜，風下側斜面が急傾斜をな km ／時を超える強風は稀である． すことが多い．これは，砂丘の風上側斜面の砂が風に跳ば 風速5 m ／秒の中程度の風で，径 0.02 mm 以下の細か され跳動して風下側へ移動し，砂丘前頂部に集積するため い粒子は，地上に落下せずに長距離浮遊 （suspension）す である．前頂部の傾斜が安息角を超えると，集積した砂が る．この様に，風に浮遊して運ばれる粒子は風塵 （dust）と 粒子流で滑り落ち，前置層を成して斜面は低角化する（第 呼ばれる．春先に日本へ届く黄砂は，中国で舞い上がった 7.7 図）．こうして砂丘は，風下側に傾斜した斜交層理面を 風塵だといわれる．また，火山の大爆発が起こると，大量 作りながら，風下へ移動して行く．場合によっては，移動 の火山灰が風塵となって世界中に広がり，天候不順の原因 してきた砂丘が砂漠外縁の緑地を埋めてしまい，緑地の砂 となることもある．径0.02–0.07 mm 程度の粒子は，浮遊 漠化をもたらすこともある． するが比較的短期間に地表へ落下する． 砂丘は，砂の量，風向の安定性，および植生の有無など 一方，径0.07–0.5 mm 程度の砂粒は，中程度の風の中で により，様々な形態をとる （第9.2 図）．砂の量が十分に 短距離跳ばされては着地しながら（高さ10 cm 以下・距離 なく植生もないところに卓越風が吹くと，バルハン砂丘 1 m 以下），少しずつ風下側へ移動する．この様な移動様 （barchan dune）ができやすい．砂の供給量が増えると，バ 式を跳動 （saltation ；躍動とも）という．更に粗い，径0.5– ルハン砂丘から準バルハン砂丘を経て横列砂丘 （trans- 2 mm 程度の砂粒は，中程度の風では地表を転がって移動 verse dune）が形成されるようになる．砂の量が乏しく，風 するのみである．この様な移動様式を転動 （rolling, slid- 向に多少の変化がある場合，平均風