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第 3 章 相互依存と組織化 セッション 6 【要約 by 多湖清子】 組織における「つながり」の問題を考えるときに使える手法やアイデアを紹介するのが 本章の目的である。次章でこのようなつながりの基本型である 2 人の行為者の相互依存関 係について考察するため、本章の最初でまず相互依存の考え方を紹介している。 水準器による実験 図 3.1 に示される水準器を使った実験は、Alex Bavelas のアイディアをもとにRaven and Eachus (1963)が行ったもので、相互依存かいかなるものかを示している好例である。図 3.1 で、A に注目しよう。A の目の前の水準器の気泡が中央になく、コーナーを水平にして気 泡を中央に戻したくても、実験装置の設定で、A は自力ではどうにもできない。A の目の 前の気泡は、B とC によって全面的にコントロールされている。こうして、A は結果に対 していかなる直接的コントロールもできないので依存的である。しかし同時に、B もC も、 コーナーを水平にするには、B は A とC に、C は A とB に依存している。このように、 いずれの人の運命も他の 2 人の行為に依存しているが、他者に依存する人はまた他者の運 命を部分的にコントロールできる状態を相互依存という。 ただし、図 3.2 のように、ただ水準器の置き方を変えるだけで、相互依存の状況は連鎖 的相互依存の状況へと一変する。各人はただ一人の他者に依存すると同時にその人の運命 を左右することもできるようになる。この場合A は C に依存するがB は無関係であり、B は A に依存するが C は無関係であり、C は B に依存するが A は無関係である。これは社 会的相互作用においてなんらかの仲介者を必要とする相互依存状況の最も単純な関係で、 日常生活でもよくみかける。たとえば、子供(A)がお父さん(C) に欲しいものを買ってもら うために、甘いお母さん(B) に付け入るといったように。 過剰人口では誰も死なない 1970 年 11 月に、東ベンガルで、サイクロンで 50 万人もの死者が出るという大災害があ った。ではサイクロンが 50 万人も殺したのか? Hardin (1971)は、サイクロンではなく「過 剰人口」が 50 万人もの人を殺したのだと論じた。過剰人口によって生活地域が飽和し、本 来住むには危険な地域にまで人口が及んだことが、根本原因なのである。肺がんで人が死 ぬと言っているケースも、根本原因は過剰人口であり、いずれも相互作用(相互依存?)の例 である。 グループ・ディスカッションにおける因果の構造/相互依存の分析 この二つの事例のような場合、その一般的特性は、因果マップを作ると明らかになる。 では、因果マップはどのように作るのか。一例として図 3.3 には、グループ・ディスカッ ションにおける事象を 12 の箱(変数を表している)で表して円形に配置している。箱と箱の 間に、ある事象が他のある事象に作用している印として矢印を引く。その際、矢印で結ん だ二つの事象が、同方向に動く(一方が増加すれば他方も増加する)場合は＋、反対方向に 動く(一方が増加すれば他方は減少する)場合は−の符号を矢印に付す。こうした手順に従っ て因果マップを完成させると、以下のような分析ができるようになる。 1 まず、箱で表した変数は、次の 4 種類に分類される。 イ) 入って来る矢印と出て行く矢印をともにもつならば、相互依存(interdependent)変数 ロ) 入って来る矢印のみならば、従属(dependent)変数 ハ) 出て行く矢印のみならば、独立(independent)変数 ニ) 矢印がなければ、無関係(irrelevant)変数 ある一つの相互依存変数を出発点とし、矢印を次々とたどって最終的に出発点の変数に戻 った場合、その軌跡を因果ループと呼ぶ。 因果ループとコントロール この因果ループが、システムや組織の運命を決めることになる。因果ループには次の 2 種類がある。 A) 逸脱・増幅ループ……ループに含まれる−符号が偶数個のループ。ある変数がいったん いずれかの方向に動くと、その動きはシステム崩壊や変質の時まで止まらない悪循環 ループ(あるいは再生