mannheimiagranulomatisに.pdfVIP

19 黒毛和種育成牛の下顎に発生した Mannheimia granulomatis に よる好酸球性肉芽腫の一症例 十勝家畜保健衛生所 ○川島 悠登 高橋 弘康 八木 梓 信本 聖子 はじめに 牛の体表腫瘤は、原発性腫瘍の他、放線菌症や牛乳頭腫症など、創傷感染や接触感染が 原因となるものも数多く認められる。しかし、創傷による体表の細菌感染は、抗菌性物質 の投与により通常は治癒する場合が多い。 今回、北海道十勝管内一農場で飼養されていた黒毛和種育成牛の下顎部皮下に、 Mannheimia granulomatis （Mg）感染による巨大な腫瘤が形成された。腫瘤は、Mg に対す るアレルギー反応に起因し、好酸球による放射状の棍棒体 （Splendore-Hoeppli 物質）（好 酸球性 SHM）の形成を伴った好酸球性肉芽腫を呈する希少な症例であったので、概要を報 告する。 Ⅰ Mg について Mg は Mannheimia haemolytica の生物型の１種である。M.haemolytica には複数の生 物型が存在することから、M.haemolytica complex （MHC）と呼ばれ、ロイコトキシン（LKT） を産生する[2]。16Ｓr ＲＮＡの塩基配列の解析等により、MHC にはMg の他に少なくとも ４菌種 （M.glucosida、M.haemolytica 、M.ruminalis、M.varigena ）が存在することが 知られている。病原性についてはM.haemolytica 以外十分に解明されておらず、国内の 発生状況は不明である[4]。 Ⅱ 発生の概要 発生農場は、黒毛和種繁殖および肥育 素牛生産農場で、115 頭を飼養 （繁殖牛 65 頭、育成牛 50 頭）していた。飼養形 態は、繁殖牛は舎外パドック付牛舎に、 育成牛は育成牛舎内で、日齢別に 10 頭未 25cm 満に区画されたペンで飼養されていた。 平成26 年 11 月、３カ月齢の育成雄牛 40cm １頭の左下顎皮下に、３×４×２cm の軟 性腫瘤が発生した。診療獣医師は、細菌 性膿瘍を疑い、ペニシリン及びストレプ トマイシンを投与したが、腫瘤は治療に 図１ 下顎腫瘤 （切除手術後） 反応を示さず、約１カ月後には硬結感を 伴い 25 ×40 ×25cm に腫大した （図１）。穿刺による排膿はなく、超音波検査で肉質様構 造を確認したため、診療獣医師は悪性腫瘍を疑い、腫瘤の一部を外科的に切除し、当所 に病性鑑定を依頼した （表１）。 表 １ 病態 ・処置の経過 腫瘤の大きさ（cm） 年月日 腫瘤の状態 治療・処置 縦×横×厚み H26.11.13 ３×４×２ 軟性 ペニシリン、ストレプトマイシン 12.11 25 ×40 ×25 充実性、硬結感 超音波・血液検査 12.15 25 ×40 ×25 充実性、硬結感 腫瘤を部分切除し病性鑑定依頼 Ⅲ 材料及び検査方法 搬入された腫瘤割面の肉眼所見は放線菌症に類似し、白色充実性で硬結感があり、直 径約２mm の黄白色の硫黄顆粒がび慢性に存在していた。 １ 細菌学的検査 ５％ヒツジ血液寒天培地を用いた５％炭酸ガス培養法及びＧＡＭ寒天培地を用いた嫌 気培養法により分離培養を実施した。分離菌の生化学的性状は、グラム染色、オキシダ a ーゼ試験、カタラーゼ試験及び ＩＤ試験-HN-20 ラピッド を用いて検査した。追加の性